【佐藤優コラム】格差がつまるほど冷え込む日韓関係

 9日、政府は新1万円札、5000円札、1000円札のデザインを発表した。1万円札に渋沢栄一の肖像が用いられることに韓国のマスメディアが反発している。

 <日本政府が1万円札に渋沢栄一(1840~1931)を採用するなど紙幣の人物を全面改編すると発表して議論を呼んでいる。渋沢は第一国立銀行、東京証券取引所、東京ガスなど多くの機関・企業を設立し「日本経済の父」と呼ばれる。/日本ではたたえられるだろうが韓国としてはあまり愉快でない。彼が大韓帝国の近代貨幣発行、鉄道敷設、京城電気(韓国電力の前身)を通じて経済浸透を先導したためだ。日本は既存紙幣も明治時代(1868~1912)の人物だ。中国の紙幣の毛沢東一色のように日本指導層の精神的背景を読み取れる>(11日「韓国経済新聞」)。

 日本からすれば難癖のようにしか見えないが、韓国人からすれば、日本で過去の植民地支配を肯定するナショナリズムが高揚するように映るのだ。その背景には、経済力をつけた韓国国民が周辺国に見下される時代は終わったという民族的自負を強く持つようになった現実がある。

 1人あたりGDP(国内総生産)を見てみよう。2017年時点で日本が約4万ドル、韓国が約3万ドルになる。しかも韓国の方が日本よりも物価が安いので、両国の生活水準は、皮膚感覚としてほぼ同じになる。そうなると韓国からすれば、既存の日韓関係のルールは、日本に比較して韓国が圧倒的に弱かった1965年時点の日韓基本条約によって作られているので、そのルールを壊したくなる。こういう衝動が韓国の日本に対する最近の居丈高な対応の背景にある。

 戦時中の徴用工問題、韓国駆逐艦による自衛隊機へのレーダー照射事件など、最近になって韓国との間で日本は面倒な問題をたくさん抱えるようになったが、その原因は、現下の日本との関係が不平等であるという認識を韓国の政治エリートと国民が共有しているからだ。韓国は日本にとって、今後、ますます付き合いにくい国になっていく。

(作家、元外務省主任分析官)

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