「いい意味でウソをつけるメディアです」…話し続けて45年・吉田照美が明かしたラジオの魅力

ラジオマン生活45年の吉田照美は新時代・令和に向けて気合のポーズ
ラジオマン生活45年の吉田照美は新時代・令和に向けて気合のポーズ
「いい意味でウソをつけるメディア」とラジオ独特の魅力を明かした吉田照美
「いい意味でウソをつけるメディア」とラジオ独特の魅力を明かした吉田照美

 ラジオマン人生45年。昭和から平成を駆け抜け、令和へと突き進む名パーソナリティーのラジオ論には重みが、たっぷりあった。

 16日、東京・浜松町の本社で行われた文化放送の定例社長会見。平成最後の会見かつ令和への移行目前とあってゲストとして登場したのが、同局の深夜番組「セイ!ヤング」などで知られるラジオ界の重鎮・吉田照美(68)だった。

 現在、同局で「伊東四朗 吉田照美 親父・熱愛(おやじ・ぱっしょん)」(土曜・後3時)と、「Pocoっとchaンネル」(月曜・深夜2時半)のパーソナリティーを務める生粋のラジオマンはまず「もともと人前で話すのが苦手だったんです。人並みに話せるようになりたいと思って、早稲田のアナウンス研究会ってサークルに入って。経済学科だったので、銀行に入ろうと思ったけど、デスクワークは面白くないなと思い始めて。身の程知らずに『アナウンサーなりたい病』になって、運良く最盛期の文化放送に拾っていただいて。僕は向いてないなと思ったのに」と74年の文化放送入社時を振り返った。

 「きれい事だけではすまないなと苦闘の日々でしたが、27歳の時、『セイ!ヤング』をやらせていただいた時が一番うれしかった。でも、裏にタモリさんの『オールナイトニッポン』があって…。何をやっても勝てないので、生き残るためにバカなことをやって。そこは僕のジャンルかなと思って、ずっとやってきました。開き直ってやってきたラジオ人生でした」と率直に話した。

 「セイ!ヤング」時代、最大の伝説となったのが「東大ニセ胴上げ実況放送」。吉田が学生服姿で東大の合格発表に乱入。本物の合格者のように胴上げされるというゲリラ企画。「派手にやってるからNHK始め民放各局、新聞社がバシバシ、フラッシュをたいてすごい騒ぎだった」とニヤリ。ちゃめっ気たっぷりに「あれね。怒られないんですよ。意外とね」と続けた。

 「セイ!ヤング」に「てるてるワイド」。ひょうひょうとした語りで人気を呼び、85年の文化放送退社後、フリーとして、テレビにも進出。私もフジテレビ系「夕やけニャンニャン」、TBS系「ぴったし カン・カン」などで、決して前に出過ぎず、軽妙に進行する姿をリアルタイムで見てきただけに思わず聞いてみた。

 「テレビでも活躍してきたからこそ言えるラジオにしかない魅力とは?」―。吉田は、こちらをじっと見ると、「僕がそもそもラジオの面白さに目覚めて、アナウンサーになりたいと思った原点が深夜放送。なんで、あんなに面白かったかと言うと、深夜放送では下ネタも満載だった。親に聞いたり、学校の先生に聞いたりでは得られないというか。下ネタによって性の悩みも解消されたりというか。そういうのが大きかった。今、そういう部分がなくなりつつあるのが、危惧しなきゃいけないところじゃないかなと思うんですけどね」。いきなり「下ネタ礼賛」で話をそらされた気がしたので、重ねて聞いてみた。

 「それは、やはり声だけで勝負するラジオという媒体ゆえの面白さか?」―。今度もこちらをじっと見つめた吉田は「テレビはウソをつけない。その人の表情をカメラがとらえてしまっていますから。きれい事を言っても、表情やたたずまいで読めちゃう。この人は必ずしも、そんなこと思ってないんじゃないってのが分かっちゃう」とテレビの怖さを淡々と解説した。

 その上で「カメラって怖いものだけど、そういう点では、ラジオはいい意味でウソをつけるメディアなんです。自分自身の本当の姿で勝負すると、あまり面白い番組ってできないんじゃないかなって。多少、デフォルメできる面白さがある。デフォルメって演出だったり、ウソだったりするわけで。テレビよりラジオの方が遊べるという気がします」と、真っ正直に自らが生きてきたラジオという媒体の魅力を語った。

 ラジオというメディアを取り巻く環境は本当に厳しい。総務省の調査によると、平日1日当たりの各メディアの平均利用時間は、テレビのリアルタイム視聴が159・4分、インターネットが100・4分なのに対し、ラジオはわずか10・6分。経営面でも全国の民放ラジオ局(コミュニティFMを除く)の2017年度の当期損益は100社中22社が赤字だという。赤字局はすべてラジオ単営社。ラテ兼営社33社はすべて黒字。いまやラジオは、テレビとの共存無しでは経営が立ち行かなくなりつつある。

 だからこそ、ラジオという舞台で生きてきた大ベテランは現在の状況について、「メディアは今や受け手にもなるし、送り手にもなる。今、起こっている本当のニュースみたいなものを、ちゃんと事実として伝えるという点が昔より劣っていると思う」とチクリ。

 「今は風刺がやりにくくなっている。そういうものが無くなってしまったらだめ。ラジオだけでなく、新聞もだけど、批判精神が今、同調圧力で消されようとしているなと思います。日本人の特性というか、強い者が一声出すと、それに倣っていくというか。ただ、なびいただけって人が日本人には多いっていう、そういう怖さは知っておかないといけないと思います」

 文化放送入局から45年。全身にラジオマンの血が流れている68歳の超ベテランは43分間に及んだ会見を、そんな言葉で締めくくった。

 会見場に響き続けたのは、昭和、平成とずっと聞き続けてきた心地よい声。そんな声に乗って、私の心に突き刺さったのは、現場で呼吸し続け、ラジオの最前線で戦ってきた本物だけが持つ、説得力抜群の言葉の数々だった。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆吉田 照美(よしだ・てるみ) 1951年1月23日、東京・葛飾区生まれ。68歳。74年、早大政経学部卒業後、文化放送にアナウンサーとして入社。78年、深夜放送の「セイ!ヤング」のパーソナリティーに抜てきされ人気に。80年スタートの「吉田照美の夜はこれから てるてるワイド」のメインパーソナリティーとなり、同番組を人気トップに押し上げる。85年、文化放送を退社し、フリーに転身。テレビにも進出し、フジテレビ系「夕やけニャンニャン」、TBS系「ぴったし カン・カン」などの司会を務めた。文化放送平日昼の帯ワイド番組「吉田照美のやる気MANMAN!」を87年から07年まで20年間担当。ラジオマンとしての人気を確固たるものにした。

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