◆第30回東京スプリント・交流G3(4月10日、大井・ダート1200メートル、不良)
第30回東京スプリント・交流G3は10日、大井競馬場のダート1200メートルでJRA5頭を含む16頭によって争われた。JRAの藤田菜七子騎手が騎乗した2番人気のコパノキッキングは1馬身差の2着に敗れ、女性騎手初の交流重賞制覇はならなかった。優勝は昨年の地方競馬の年度代表馬で、歌手の北島三郎が所有する4番人気のキタサンミカヅキ(森泰斗)。2番手から直線で抜け出し、交流重賞3勝目を飾った。
雨が降りしきる不良馬場の夜の大井。菜七子は初のタイトルまで1馬身届かなかった。「勝った馬にうまく乗られてしまいました。すごく悔しいです」。重賞では自身最高の“銀”でも負けは負け。21歳の女勝負師はストレートに感情を表した。
パートナーのコパノキッキングにとっては、地方のダート、ナイター競馬、水の浮く不良馬場と初もの尽くし。そんなとき、時折見せる出遅れ癖が顔を出す。「ゲートの体勢は悪くなかったけど、思ったより後ろからの競馬になってしまった」。それでも、懸命に手綱を動かして、馬群を縫うように中団へ。4角で外へ持ち出すと、相棒はメンバー最速の36秒4の末脚で伸びたが、2番手から抜け出したキタサンミカヅキには届かなかった。
「スタートがいい子なのに、タイミングが合わなかったのかな。ただ、前が有利な馬場で後ろから来たのはキッキングだけ。次につながる内容です」とレースを振り返ったDr.コパこと小林祥晃オーナー。あと一歩に近づく菜七子との重賞制覇とともに、もうひとつの夢へ動き出す。「菜七子騎手を新馬から起用してクラシックに乗せること」。そのため、これまで所有馬は栗東、美浦と半々に近い振り分けだったが、今年の2歳馬は菜七子シフトが敷かれる。「日頃から乗ってもらって、育ててもらいたい。そのために今年は所有馬の7割近くを美浦に入厩させますよ」と、菜七子と紡ぐ新たな夢を思い描く。
重賞制覇の夢はもう目の前。令和元年となるキッキングの次走について、村山調教師は「北海道スプリント(6月6日、門別)になるかもしれない」と明かした。「もっともっと活躍、走れる馬。期待は変わらないです」と菜七子。信頼を寄せるコパさんと前へと進んでいくだけだ。(松浦 拓馬)