【佐藤優コラム】大阪W選挙…クロス選挙の危険性

 8日、大阪府の松井一郎知事(当時)と大阪市の吉村洋文市長(当時)はそれぞれ辞職を届け出て、知事と市長を入れ替えてダブル選に立候補することを正式に表明した。これで4月7日に大阪府と大阪市で、知事、府議会、市長、市議会の選挙が同時に行われることになる。

 初期ナチス・ドイツの理論家だったカール・シュミットは政治の本質は、敵と味方を明確に区分して、敵を徹底的に殲滅(せんめつ)することである、と強調した。松井氏と吉村氏の手法は、まさに「敵・味方」理論に基づいている。

 公職選挙法は、第259条2で知事や市長が辞任して再選した場合の任期の起算について「地方公共団体の長の職の退職を申し出た者が当該退職の申立てがあったことにより告示された地方公共団体の長の選挙において当選人となったときは、その者の任期については、当該退職の申立て及び当該退職の申立てがあったことにより告示された選挙がなかったものとみなす」と定めている。現職が自分に有利な時期に選挙をして任期を延ばすことができないような縛りをかけている。この縛りを逃れるために松井氏と吉村氏は「クロス選」という奇策に出た。

 報道では、大阪都構想を実現するための住民投票を実施することが松井氏と吉村氏の目標と報じられているが、筆者は都構想自体が、この人たちが自らの権力基盤を強化するための道具にすぎないように思えてならない。法律で禁止されていないことならば、何をしてもいいという発想自体が民主主義となじまない。

 権力者は、いったんつかんだ権力を手放そうとしない本性がある。今回、松井氏と吉村氏が「クロス選」で当選し、このような技法で、権力を保持できるという認識が広まると、他の道府県でも同じような行動を取る首長が出てくると思う。有権者によって付与された任期を党利党略で放り出す人たちが民主主義の土台を腐らせていく。今回のクロス選挙の結果が、日本の将来に禍(わざわい)をもたらす危険性を過小評価してはならない。(作家、元外務省主任分析官)

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