米映画の巨匠、ロブ・ライナー監督、多彩な名作の秘密「見る人がどれだけ共感できるかが大事」

温厚な人柄だったロブ・ライナー監督(カメラ・生澤 英里香)
温厚な人柄だったロブ・ライナー監督(カメラ・生澤 英里香)
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」から
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」から
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」から
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」から

 「スタンド・バイ・ミー」「恋人たちの予感」のヒット作で知られる米映画の巨匠ロブ・ライナー監督の新作「記者たち 衝撃と畏怖の真実」が、29日に公開される。コメディー、ミステリー、政治もの…作品は多彩で日本にも監督を愛するファンは多い。先頃初来日したが、どんな素顔の持ち主なのか。人柄に触れる中で名作誕生の原点を探りたい。(内野 小百美)

 映画は「大量破壊兵器の保持」を理由に、米政府が仕掛けたイラク侵攻は「政府のねつ造と情報操作」だったことを突き止める新聞記者たちの奮闘を描く。さまざまな圧力とも闘い、記事が掲載できるのか。膨大な取材が報われるのかどうかの展開も目が離せない。

 ライナー監督は「03年のイラク戦争開戦時から構想していた。もし国民が真実を知ることが許されないのなら、本当の民主主義は成立しない」の思いに駆り立てられていた。くしくも撮影中に大統領選。この映画が暗示するかのようにトランプ大統領のメディア不信は言わずもがなで、両者は対立している。

 いくら名匠といっても好きなものを撮れるわけではない。「今回は製作費を集めるのに苦労したよ。テーマ的にも、米国のメジャーのスタジオが一切作らないタイプのものだから。それにそもそも商業性のある作品でないだけに」

 監督作に「LBJケネディの意志を継いだ男」(18年)も。本人に政治家志望もあるのだろうか。「知っている人は少ないが、かつて7年ほど地方政治の仕事もしていた。忙しくてその時期は映画を1本しか撮っていない。カリフォルニア州の就学前の子供医療を考えたり。政治には関心があっても政治家になるのは別だね」

 作品は02年頃が舞台。ネットメディアはいまほど発達しておらず、あくまで紙面、活字で勝負するメディア業界が描かれていく。「でも以前のような新聞の復活は、もはや無理だよ。光の速さでテクノロジーは進んでいる。情報を得る手だて自体が変わってしまったんだ。マスコミで働く人も、この現実を受け入れなければならないんだよ」

 今作では出演も。記者を束ねるワシントン支局長を包容力ある演技で見せる。俳優降板による代役だ。「監督との兼務は本当はしたくないんだ。集中力を保つのが大変だからね。でも演じるのは以前から大好きだよ」という。

 マーティン・スコセッシ監督から「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(13年)で出演依頼の電話がかかってきたときの話になった。「『脚本送るよ』と言われたんだ。でも『出る、出る。脚本送りはいらない』と返した。他の監督のものは出来も責任も、自分のせいじゃないから(笑い)」

 狭い分野にとどまらず作品の多彩さでも観客を引きつけてきた。常にその背景にあるのは「見る人がどれだけ共感できるか。それを一番大事にしてきたよ。そしてどんなときも誠実さ、人間らしさを失わないことを思いながら作るんだ」。

 ジャンルは異なるのに作品の根底に流れるハートウォーミングな部分。日本にもファンが多いのはこのあたりにあるだろう。「僕はみんなが意地悪するようなニューヨーク出身さ。今回初めて日本に来てみて驚いたよ。礼儀正しいとは聞いていたけど、みんなすごく親切で優しくて」

 大物といわれる人は近寄りがたい雰囲気をまとっている人も少なくない。この人の場合、相手を緊張させず、紳士的。「特に撮影現場は、居心地の良い場所にしたいんだ。気持ちの良い体験ができる場であること。自分が与えることを続けていれば、最後は自分が助けられるものだよ」

 ユーモアを交え、穏やかに話す。どこかふわふわしたマシュマロのよう。「人間は結局つながっている。宇宙飛行士のドキュメンタリーを見てその思いを一層強くした。各国の飛行士は真っ先に自分の国を探す。でもすぐ気づくんだ。マーブル色をした地球上に一緒に生きていることを」。人生観をうかがわせる言葉は、これから生まれる作品にも反映されていく。

 ◆ロブ・ライナー 1947年3月6日、米ニューヨーク生まれ。72歳。父親は俳優で映画監督のカール・ライナー氏。子役として活動し、70年代にはエミー賞助演男優賞も。成人後テレビなどの演出分野に進出。84年「スパイナル・タップ」で初メガホン。主な作品に「ミザリー」(91年)、「ア・フュー・グッドメン」(93年)、「アメリカン・プレジデント」(96年)。「最高の人生の見つけ方」(08年)は同作をモチーフに吉永小百合主演(今秋公開)で日本版製作中。「ぜひ見てみたいね」と監督も期待する。

 ◆記者たち 衝撃と畏怖の真実 

 米ジョージ・W・ブッシュ政権下、「大量破壊兵器保持」を理由に始まった米国のイラク侵攻。実はその理由がウソで、真実を明らかにしようとするジャーナリストたちを描く実録ドラマ。ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リー・ジョーンズ、ミラ・ジョヴォヴィッチらが出演。池上彰氏が字幕監修。91分。

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