新ドラマ「あなたの番です」で大勝負…視聴率三冠王・日テレ「リスクは覚悟」の挑戦

日本テレビの新ドラマ「あなたの番です」にW主演する原田知世と田中圭
日本テレビの新ドラマ「あなたの番です」にW主演する原田知世と田中圭
日本テレビに勇気を与えた「3年A組―今から皆さんは、人質です―」主演の菅田将暉
日本テレビに勇気を与えた「3年A組―今から皆さんは、人質です―」主演の菅田将暉

 「編成上のリスクはあります」―。率直に口にされた言葉が“常勝”日本テレビの覚悟の程を物語っていた。

 14日、東京・汐留の本社で行われた同局の4月番組改編説明会。この日、今クール最大の目玉として発表されたのが、原田知世(51)と田中圭(34)W主演のドラマ「あなたの番です」(日曜・後10時半)だった。

 企画・原案はAKB48や坂道グループでおなじみの超大物プロデューサー・秋元康氏(60)。同局史上25年ぶりに2クール連続、半年間に渡って放送される話題作について、鈴間広枝プロデューサー(P)は「原田さんと田中さんが演じる夫婦が引っ越してきたマンションで交換殺人に巻き込まれていくミステリーです。ささいなきっかけから、そこにいる13人の住人が一人、また一人と殺されていく物語。海外ドラマのように来週、どうなっちゃうのかという展開が毎回たたみかけるように起こる。早く見たいと思わせる作品にしたい」と意欲満々に語った。

 その言葉を耳にした時、私には3週間前の同局・大久保好男社長(68)の定例会見での一幕が思い出された。

 最終回で日曜午後10時半枠史上最高の平均視聴率15・4%を記録した菅田将暉(25)主演の前作「3年A組―今から皆さんは、人質です―」の話題になったとたん、常に謹厳実直なムードを漂わせる大久保社長が「私は(好評で)良かったなというくらいです。後は編成担当に自慢してもらいます」とニヤリと笑った。

 そんな社長の隣で福田博之編成局長が「前作に続いての学園ものでティーン層の支持を熱くいただいている。日曜の夜、翌日の学校の事を考えると、ティーン向けでいいのか不安はあったけど、見事にしっかりと日曜の夜にリアルタイムで視聴していただいて、母親と思われる層からも熱い支持を得ている。ネット戦略もうまく行って、(視聴者に)刺さったのかなと思っています」と笑顔で話した。

 そう、昨年10月クールの「今日から俺は!!」「3年A組」と2クール連続のヒットは各テレビ局がノドから手が出るほど欲しい若者層の支持を得たからこそ。さらに編成会見冒頭での岡部智洋編成部長の「新しい視聴者の開拓、今、見ている方にもっと好きになっていただくことを追求していきたい。日本テレビの特性、13~49歳のコアターゲットをしっかりつかんだ上で次世代の若い視聴者の掘り起こしを狙いたい」と言う気合のコメントも心に響いていたから、思わず聞いた。

 「この時間帯、2作続けての学園ものでティーン層の支持を得た。それなのにマンションを舞台にした夫婦主役のミステリーは『次世代の若い視聴者の掘り起こし』という狙いとズレるのではないか?」―。

 意気込んで聞いた私の方を見つめた岡部部長は「彼女(鈴間P)が一番、プレッシャーを感じていると思う」と苦笑した上で「確かに話題性、中毒性のあるエッジの効いたドラマ作りを目指した枠で、ここ2クールはティーン層に刺さって好評を呼んできました。ただ、学園ものということより、ドラマの内容こそがティーンの心に刺さったと思う。さらに今回はティーンの気持ちをつかんでいらっしゃる秋元さんの企画ということで信頼しています」と冷静に続けた。

 しかし、「飽きやすい」のもまた若者の特性。今クールも好調の水谷豊(66)主演のテレビ朝日系「相棒season17」にしろ、1話完結形式だからこそ半年間の視聴続行が可能なのではないか。直前に鈴間Pの「半年間(の放送は)長いのでございますけれども、面白い物を作ってやろうぜと、スタッフ、キャスト一丸で燃えております」というコメントも聞いていたから、そのまま質問した。

 「マンションでの交換殺人という一つのストーリーで半年間、視聴者は見続けるのか。途中で脱落する危惧はないのか?」―。

 今度もこちらをじっと見つめた岡部部長は「編成上のリスクはあります」―。そう率直に答えた上で「カメラ、衣装までスタッフ一丸となって、きちんと作品を作れば、1話完結形式でなくても、しっかりやっていけると『3年A組』の成功が勇気をくれました。今回も制作陣に全幅の信頼を置いております」と続けた。

 菅田演じる美術教師・柊一颯(ひいらぎ・いぶき)が自ら命を絶った女生徒の死の真相を暴くため、卒業式10日前に生徒29人を人質に取り、“最後の授業”を行うという物語が「3年A組」。設定はシンプルながら、毎回驚きの展開が待つ“ジェットコースター的展開”でティーン層の人気を集め、大ヒットとなった。

 同作の「スタッフ一丸となって、きちんと作品を作れば、やっていける」という“成功例”こそが5年連続で視聴率三冠王継続中の王者・日テレの制作陣に、さらなる勇気を与えたのだ。

 岡部部長が昨年10月の改編会見で口にしたのが、「まったく持って日テレが盤石とは思っていない。二つの危機感を持っています」という言葉だった。

 「一つは他局とのシェア(視聴率)争い。そして、もう一つが地上波として、デジタルメディアという部分での生活者の動画コンテンツへの接点の部分での危機感。他のメディアを含めた(戦いの中)地上波テレビとして、どういうプレゼンス(存在感)を持っていくか。そこに危機感を持っています」と岡部部長。

 その視線の先には、若者がスマホ片手に「いつでも、どこでも」動画配信サービスで好きな番組が視聴できるNetflix(ネットフリックス)やアマゾンプライムなどの新たなライバルがいる。

 民放各局の戦いのステージは、すでに「他局と争って、いかにリアルタイムで番組を見てもらい、視聴率を稼ぐか」から「いかに若者を魅了する動画配信サービスより魅力的な番組を生み出すか」へ―。王者・日テレがリスク覚悟で送り出す「あなたの番です」こそが今後の各局の戦いのカギを握る作品ではないか。私は、そう見ている。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆民放各局の4月改編率と2018年の年度平均視聴率と順位

 ▽日本テレビ ▼改編率全日(午前6時~午前0時)4・3%、ゴールデン(午後7時~10時)11・9%、プライム(午後7時~11時)4・4% ▼2018年度平均視聴率()内は順位 全日7・8%(1位)、ゴールデン11・9%(1位)、プライム11・5%(1位)

 ▽テレビ朝日 ▼同全日10・5%、ゴールデン26・0%、プライム22・4% ▼同全日7・7%(2位)、ゴールデン10・5%(2位)、プライム10・6%(2位)

 ▽TBS ▼同全日5・0%、ゴールデン14・29%、プライム18・04%。 ▼同全日6・2%(3位)、ゴールデン10・1%(3位)、プライム9・9%(3位)

 ▽フジテレビ ▼同全日17・1%、ゴールデン9・0%、プライム13・9% ▼同全日5・7%(4位)、ゴールデン8・0%(4位)、プライム7・9%(4位)

 ▽テレビ東京 ▼同全日25・1%、ゴールデン29・4%、プライム29・9% ▼同全日2・7%(5位)、ゴールデン6・3%(5位)、プライム5・9%(5位)

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