待ちに待った「ゴールデン☆スター」の帰還…飯伏幸太、復活の春が来た

復帰戦で内藤哲也と激闘を展開する飯伏幸太
復帰戦で内藤哲也と激闘を展開する飯伏幸太
2か月ぶりの復帰戦後のバックステージに引き上げたとたん、大きく息を吐いた飯伏幸太(カメラ・中村 健吾)
2か月ぶりの復帰戦後のバックステージに引き上げたとたん、大きく息を吐いた飯伏幸太(カメラ・中村 健吾)

 誰よりも華やかに、そして、しなやかに「ゴールデン☆スター」がリングに帰ってきた。

 8日、東京・後楽園ホールで新日本プロレス春のシングル・トーナメント「NEW JAPAN CUP」(NJC)が開幕した。ひときわ大きなプ女子(プロレス・ファンの女性)の大歓声を集めたのがトーナメント戦以外に組まれた、この日4試合目の6人タッグマッチ。選手入場の瞬間、格闘技の殿堂にこだましたのは黄色い歓声だった。

 1・4東京ドーム大会のウィル・オスプレイ戦で負った脳しんとうのため長期欠場していた飯伏幸太(36)が2か月ぶりにリング復帰。入場曲「Golden☆Star」が流れたとたん、あふれたのは満場の「イブシ」コール。全力疾走でリングの周りを1周し、最前列の観客とタッチをかわしていく、いつもの儀式を終えると、10日の兵庫・尼崎大会でのNJC初戦で激突する内藤哲也(36)組とのマッチアップに臨んだ。

 他の2人を制し、いきなり内藤と対峙(たいじ)すると、破壊力抜群のハイキック、その場跳びムーンサルト・プレスと、ブランクを全く感じさせない戦いを展開。試合はパートナーのSHOが鷹木の必殺技・ラスト・オブ・ザ・ドラゴンの前に敗れたが、満場の「イブシ」コールは最後まで鳴りやまなかった。

 私は昨年2月、本紙の女性向けページ「L」欄に登場してもらうため、70分間に渡って話を聞き、その魅力に出会った。

 「小学校を卒業する頃には今やっている技は全部できました」と、自ら明かした抜群の運動能力を武器にした飛び技にキックボクシングの大会でも優勝した抜群の打撃力。まさに「プロレスの天才」としか言いようがない存在。ストイックなまでのトレーニングと「プロレスをみんなに知ってもらうため」路上プロレスやバラエティー番組への出演も全くいとわない遊び心にも心引かれた。

 いまだ大人になれない幼稚な部分までも魅力のうち。昨年10月のIWGPヘビー級選手権で盟友・ケニー・オメガ(34)に惜敗した直後には自身のブログに「勝てなかったら終わり…。だから…。辞めないといけないということになります」と突然つぶやき、引退騒動に発展した。それほどまでに常に自分を追い詰め、1試合1試合、命を削るファイトを続けていることもまた私は知っていた。

 この日、10分25秒の戦いを終え、汗まみれでバックステージに引き上げてきた飯伏は「全然、試合の感覚がダメです」と、まず吐き捨てた。その上で「まあ、明日(9日の試合で)で取り戻します。よし! これからですから」と自分に言い聞かせるように続けた。

 「僕の中では(脳しんとうで1月4日の)東京ドームの記憶すら怪しいわけで。最後の記憶は(昨年)12月15日のリングでみんなの前に立った時かな。感じとしては3か月くらいのブランクがある」と、症状が本当に深刻なものだったことまで明かしたから、反射的に聞いてしまった。

 「常に『僕には、もう時間がない。後がない』と言ってきただけに、2か月に及んだ欠場での危機感は、それこそ大きかったのでは?」―

 常に質問者の目を見て答える飯伏は、この日も私の目をじっと見つめると、「いつも、本当にMAXの危機感なので、それ以上は僕にはないんです」―。きっぱりと言うと、ちょっと不思議な笑みを浮かべた。

 そして、「ダメだ、ダメだ~」と続けた後、「でも、1日でも大丈夫。(レスラーを)15年やってきているから。なんとでもなりますよ。やりますよ!」と言い放ち、取材陣に「次の試合始まってますよ。行かなくていいんですか?」と、笑って引き上げていった。

 その姿にホッと一安心し、「やっぱり、飯伏は飯伏だな」―。そうも思った。そう、どんな大ケガを負っても、DDT時代の盟友・オメガがアメリカに去っても、ついに新日を主戦場にすることを宣言しても、この男は絶対にブレない。

 「プロレス界の歴史を変えたいと思っています」という言葉を聞いたのは、昨年2月のインタビューの時だった。「今、やらないといけないことが自分の中で分かってます。今が勝負だから選んだのが、一番見ている人が多い新日。行くところまで行きたいし、自分が一番、楽しみです」という言葉も聞いた。

 飯伏のことを「飯伏がいれば、この先ずっとプロレス界は安泰」と言ったのは、新日のエース「太陽の天才児」棚橋弘至(42)だった。「今までいなかった、ちょっと特別な存在」と言ったのは現在、米WWEでスーパースターの座に上り詰めた中邑真輔(39)だった。

 その戦いを見れば、誰もが一瞬で魅了される「ちょっと特別な存在」こそが飯伏幸太。そんな「ゴールデン☆スター」が今、やっと帰ってきてくれた。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆飯伏幸太(いぶし・こうた) 1982年5月21日、鹿児島・姶良(あいら)市生まれ。36歳。キックボクシングや新空手に熱中後、2004年7月、DDT東京・後楽園ホール大会でのKUDO戦でレスラーデビュー。09年からは新日本プロレスに参戦。ケニー・オメガとのタッグチーム「ゴールデン☆ラヴァーズ」で活躍。11年にはIWGPジュニアヘビー級王座を奪取。13年、DDTと新日のダブル所属を発表。15年にはAJスタイルズの持つIWGPヘビー級王座に挑戦するなどエース格に成長も16年2月、両団体からの退団を発表。個人事務所・飯伏プロレス研究所を設立し、フリーランス選手として各団体のリングに立つ一方、路上プロレスなどの活動も。愛称は「ゴールデン☆スター」。181センチ、92キロ。

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