プロ野球で着用者急増中のフェースガード 安全性確保もアマ球界では“使用不可”のなぜ

フェースガード付きのヘルメットを着用する巨人・丸
フェースガード付きのヘルメットを着用する巨人・丸
「C―FLAP」を付けたヘルメット
「C―FLAP」を付けたヘルメット

 広島から巨人にFA移籍した丸佳浩外野手(29)らが使用して注目を集めているフェースガード付のヘルメット。キャンプ中では多くの球団の選手が試し、巨人では原辰徳監督(60)の意向で打席に立つ投手陣に着用を義務づけするなど、シーズンでも使用選手が激増するのは確実だ。顔面骨折などから身を守るフェースガードだが、日本のアマチュア野球では現状、“使用不可”の扱いになっている。

 ◆スタントン使用でメジャーで浸透

 フェースガードの正式名称は「C―FLAP(シー・フラップ)」。米国セントルイスのマークワート社製で、ポリカーボネードで作られている。長さ約20センチ、幅約10センチでヘルメットにネジで取り付けて使用する。米大リーグでは2014年にスタントン(当時マーリンズ)が着用したことで脚光を浴び、一気に広がった。

 現在、日本で「C―FLAP」を扱っているのはカシマヤ製作所。西上茂社長(44)が出会いを説明した。「最初はある大学リーグでプレーする学生から相談を受けて、取り寄せたんです」。同社は打撃用手袋のフランクリン、バットのマルッチといったメジャーリーガーが使用する用具を扱っている。試合中に顔面に死球を受け陥没骨折した大学生が「C―FLAP」を扱っていないか相談したのだ。その選手は骨折した箇所にプレートが埋まっている。その場所にもう1度死球を受ければ、命の危険もあると医師から言われていた。

 野球を続けたいと訴える選手のために、西上社長は個人的に取り寄せて、選手にプレゼントした。その選手が昨秋のリーグ戦で「C―FLAP」を付けたヘルメットを使用しようとしたが、試合前の用具チェックで規則外ということで“使用不可”となったという。

 ◆アマチュアではSGマークが必須

 野球規則ではヘルメットの着用について「プレーヤーは打撃時間中およびランナーとして塁に出ている時は、必ず野球用ヘルメットをかぶらなければならない」とあるが「アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う」と注記がある。高校野球、大学野球を統括する日本学生野球協会、社会人野球の日本野球連盟ではともにSGマーク(製品安全協会が認証)が付いたものを使用すると定めている。C―FLAPを付けるとヘルメットの改造と見なされ使用が出来ない。

 「C―FLAP」の必要性を実感していた西上社長は今年1月に同商品の日本総代理店となった。製品安全協会がヘルメットの検査を行っている委託検査機関に持ち込んで、SG基準と同様の衝撃吸収性試験を行った。結果、「C―FLAP」を取り付けたヘルメットは、通常のヘルメットよりも、衝撃加速度の数値が低くなり(より衝撃を吸収している)、また当然SG基準内に収まったことを確認した。その結果をもとに、当該連盟などに問い合わせたが、規則を理由に使用は認められなかった。

 ◆SG基準は時速108キロでテスト

 SGマークについて説明したい。製品安全協会が定めた消費生活用製品の安全性を認証する制度で、SG基準に適合した製品に与えられる。SGマーク付き製品の欠陥で人身事故が発生し、当該欠陥と人身事故との間に因果関係があると認められた場合には、同協会が被害者1人につき最高1億円の損害賠償を行うとされている。ただプロ野球で使用した場合には損害賠償の適用外となっている。

 硬式野球用のヘルメットはどのような検査をしているか。形や重さにも決まりがあるが、衝撃吸収性試験では、速度30m/s(時速108キロ)の硬式ボールを人頭模型に装着したヘルメットに衝突させた時の最大衝撃加速度を図る。頭の部分と耳あての部分にそれぞれボールを当て、規定値は2500m/s^2(メートル毎秒毎秒)以下とされている(2500m/s^2はほぼ250G)。規定値について製品安全協会の担当者は「頭の骨が陥没せずに傷害が残らない数字」と説明している。

 野球ヘルメットのSG基準は1974年に制定され、検査方法などは度々改正されているが、硬式ボールを当てる速度は変更されていない。時速108キロのボールは実情に即していないのではの疑問もあるが、担当者は「(実験方法の見直しは)検討はしているが色々な理由から変更はしていない」としている。

 西上社長は、SG基準だけでは安全性が担保されないと考え、同じ検査機関で速度40m/s(時速144キロ)で同様の検査を敢行。「C―FLAP」付きヘルメットの耳あて部分は2023m/s^2と基準内の数値を記録、「C―FLAP」に直接当てても破損がないことを確認している。

 現状ではフェースガード付きのヘルメットがSG基準として認められるためには、取り付けなどをしない一体型を作り、検査を通過する必要がある。そのためには新たに金型を作成するなど時間も費用も要する。西上社長は「プロの選手の取り付けに立ち会ったが、10人いれば10人、付ける角度が違う。一体型は無理がある」と説明する。

 昨年は高校生が練習試合中に頭部死球を受けて亡くなるという痛ましい事件が起こった。西上社長は「これ以上、けが人を出したくない」と訴える。そもそもアマチュア球界が「SGマーク」のヘルメット着用を義務づけたのも、選手の安全を守るためだったはず。選手ファーストとして、製品安全協会とメーカーとの話し合いでのSG基準の変更や規則の見直しなど迅速でなおかつ積極的な議論が進むことを望む。(コンテンツ編集部・高柳 義人)

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