【育てる】来季勇退の関学大アメフト部・鳥内秀晃監督「体罰がないから強い」

インタビューに答える関学大・鳥内監督
インタビューに答える関学大・鳥内監督

 関学大アメリカンフットボール部の鳥内秀晃監督(60)が今月11日、来季2019年度シーズン限りでの勇退を表明した。今季は昨年5月の日大との定期戦で起こった悪質タックル事件を乗り越え、2年ぶりの大学日本一を達成。就任27季目で11度目の甲子園ボウル制覇へ導いた。自身の母校を大学アメフト界随一の強豪に育て上げた指導哲学とは。関西メディアに親しまれるコテコテの大阪弁で語った。(取材、構成・田村 龍一)

 1月3日のライスボウルで今季は終了したが、鳥内監督は息つく暇もなく、新4年生一人一人と個別面談を重ねている。来季は指揮官としてのラストシーズンだが、必勝のルーチンはこれまでと全く変わらない。

 「監督就任3~5年目に関西で勝たれへん時期が続いて、4年生がコーチを兼ねるぐらいしっかりせんと勝てないと感じた。当時フルタイムの指導者は俺だけ。部員全員に対して言うても、部員は『自分“ら”に言われている』と感じ、自分のこととして受け取ってくれへん。会社の朝礼で上司の話を部下が聞いてへんのと一緒。せやから一人一人と面談する。下級生も2~3人ずつ呼んで全員面談。『チームをどうしたいねん?』と。答えは求めない。一緒に考えていけばええ。オーバーコーチングはあかん。試合中に考えるのは学生やから」

 初めから意識の高い学生もいれば、そうでもない学生もいる。毎年、半年以上をかけてチーム一丸にする。

 「(新チーム発足当初は)何も考えていない学生もおる。勝つためにどうすんのか。4年生は自分で考えて、やり方を下級生に伝えてほしい。面談はその方法論の確認。入学から3年間の反省もある。後輩に自分と同じ失敗をさせるんではなく、先に伝えてやればええ。メンバーに入られへんかったり、落ち込む時はある。そんな時に支えてやらんと、チーム力は上がれへん。1軍バリバリの選手もおれば、2軍と行ったり来たりする選手も、スカウティングチームの学生もおる。全員で戦わんと勝負には勝たれへん」

 試合中はピッチ脇で仁王立ちしているが、感情的に選手をどなり散らすことはない。そこには信念がある。

 「教えてないことは出来へん。サボってるなら怒るけど、うまいか下手かでは怒らへん。怒るよりも教える。どなるのは指導者の手抜き。4年生も後輩にボロカス言うてる時がある。『皆の前でそんだけ言うと、アイツやる気なくすで』とアドバイスはする。下手な原因は練習が足らんだけ。この競技を理解してないと勝てない。多少鈍くさくても、こうすればタッチダウンを取れるということを分からんとあかん」

 在学中は4年時に副将を務め、82年の卒業後は南オレゴン州立大など米国で4年間、コーチ留学をした。現在の指導に生きている。

 「アメリカは自己主張が強い。日本は今も(チャンスが来るまで)順番待ち。そこを変えていかなあかん。向こうでは学生を一人の男として見る。子ども扱いしない。「チャンスを下さい」と学生も言う。(留学時に師事した元NFLコーチの)チャック・ミルズさん(※)がよく言うてた。『相手のことを憎むのではなく、リスペクトしろ。彼らがいるから頑張れる』と。スポーツに勝ち負けはある。汚いことしてまで勝っても仕方ない」

 昨年5月、パスをした後の無防備な関学大選手に対し、日大選手が背後から突撃して負傷させた悪質タックル事件はアメフト界の枠を超え、社会問題になった。

 「あれはフットボールではない。歩いている人間に後ろからタックルするんか。なんで日大の選手はあそこまで追い込まれたんか。大人の責任。うちの学生には『ああいう事が起きたけど、いちいち考えんでもええ。あとの対応はこっち(大学)がやる』と伝えた。『お前たちも汚いことは絶対にやめろ』とも改めて言った。特に今シーズンは、クリーンに戦い抜いてくれたと思う」

 就任当初と現在では学生気質が大きく変わったと感じている。携帯電話の使い方にも注意を払う。

 「少子化で親が子どもに優しくなり過ぎてる。怒られ慣れてない子が多い。兄弟げんかも減り、ぶつかり合うことにも慣れてない。こっちも怒り方を考えないとあかん。携帯のLINEも連絡手段だけにするように言うてる。数年前に『既読になっているのに返信が来ない』と(心を)病んだ部員がいた。そんな大学生は今たくさんおる。じかに会って感情をぶつけ合えばええ。例えば、営業マンが人と会わずにLINEだけで成績を伸ばせるはずがない」

 元関学大アメフト部監督だった父・昭人さん(故人)から殴られた記憶はない。部員はもちろん、同部OBの息子3人には家庭でも同じように接した。

 「関学には体罰がない。だから強い。俺も在学中は下級生の時から意見してたが、殴られたことはない。勝つために一番ええ方法を考えてきた。殴られながらやっても限界がある。自分がされた体罰をそのままやる指導者はカッコ悪い。言葉で言えばいい。手をあげること自体、教えるセンスがないのを証明しているようなもの。家庭でも同じや」

 目の前の勝敗はもちろん大事だが、何よりも卒業後に学生時代の経験を生かしてほしいと考えている。

 「なんぼ(技量が)いい選手がおっても、サボり、うぬぼれが出てきたらあかん。チームに伝染する。そんな選手ならやめてもらっていい。卒業後は私利私欲に走らず、社会や家族のために頑張ってほしい。嫁さん、子どもをしっかり守ってほしい。スポーツ自体が相手の弱点を突くイヤらしい面もある。(世の中に出て)簡単にだまされるなよ、と言いたい。最初から関学ファイターズで日本一になったとか自慢せず、『あいつ、なかなかやるな。ファイターズ出身か』と言われるぐらいの人間になってほしい」

 ◆鳥内 秀晃(とりうち・ひであき)1958年11月26日、大阪市生まれ。60歳。摂津高ではサッカー部。関学大でアメフトを始め、1年時からDB、キッカーで活躍。4年時は副将。卒業後は米コーチ留学を経て86年から関学大守備コーディネーターを務め、92年に監督に就任する。甲子園ボウル優勝11度、ライスボウル優勝1度。関西学生1部リーグは優勝16度、リーグ通算166勝21敗2分け。在任27年は歴代最長で、監督業のかたわら製麺業も営む。

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