性のタブーを切り開いた女性たちに勇気をもらった われわれ障害者もごく当たり前の人間

「Wの悲喜劇」に出演した(左から)内藤沙月、梅津絵里、中嶋涼子、遠山涼音
「Wの悲喜劇」に出演した(左から)内藤沙月、梅津絵里、中嶋涼子、遠山涼音

 皆さんは「障害者の性」と聞くとどのような記憶を想起するのだろう。真っ先に思い浮かぶのは、2016年の作家・乙武洋匡氏(42)の複数の女性との不倫騒動だろうか。昨今では、LGBT(性的マイノリティー)にも目を向けられることが多くなった。記者は40代男性で4回心臓の手術を経験した重度の内部障害者。未婚だが、障害者だからといって恋愛に対しての感情は失ってはいない。

 日本において「障害者と性」というテーマが語られる場合、そのほとんどは「『男性』障害者と性」についてだ。男性障害者の性問題について取り組んでいる企業や一般社団法人はあっても、女性障害者の性・生殖については、長い間大きなメディアで取り扱われることはなかった。

 そんな中、東京パラリンピック2020(8月25日開幕)があと1年半に迫った日本でも、障害者スポーツ(パラスポーツ)や、障害者そのものに注目が集まり、ネットテレビ番組で、初めてと言える「女性障害者の性」が取り上げられた。

 Abema TV「Wの悲喜劇」(初回土曜・後11時)の「#65 車椅子だけどセックスが好き」に、障害や難病を抱える女性たちとして障害者タレントの、梅津絵里(41、SLE:全身性エリテマトーデス)、中嶋涼子(32、横断性脊髄炎)、遠山涼音(27、下肢障害と統合失調症)、内藤沙月(22、骨形成不全症)が出演。MCのSHELLY(34)とともに、バラエティーの観点からも真面目な観点からも「夜の生活」について語り合った。

 番組では「リアルな性生活」が赤裸々に語られた。障害を持つ女性で結婚し子供を産んだ人も大勢いる。番組を観賞したジェンダー論・セクシュアリティー研究に詳しい編集ライター・赤谷まりえ氏(35)は「メディアで『性』が語られる時というのは、真面目な話(妊娠・出産・感染症・人権などのテーマ)か、エンターテインメント(エロやアンダーグラウンドな話題)か、どちらかに偏ることが多い。真面目なことにも、エンタメ的な話題にも関係している毎日を送っているはずなのに、メディアが取り上げる時に限っては人格がまるで分裂しているかのように語られています」と指摘し、「でもこの番組は、それぞれの人生から性が明るく真面目に語られていて、とてもバランスが良いと感じました。障害者が健常者の世界をリードした瞬間と言えると思います」と評価した。

 番組内で、既存のマスコミでは表記できない言葉も飛び交った。障害を抱えたことにより、性欲そのものがなくなった女性もいるという。それが「下品な言葉」という捉え方だけではなく、障害も健常も関係ない「生の声」として聞こえたのも確かだ。

 赤谷氏は「既存メディアでは、性を語ることについてエンタメばかりが強調されていると感じます。そのため性的に奔放なキャラや、ゴシップが出ると不真面目なイメージ、あるいはダーティーなイメージがついてくる」と続け、「でも性について能動的に語ることは、自分の人生は自分のものである、と宣言していることに他ならない。たとえば日本には、障害者への強制不妊手術問題という暗い歴史があります。主に重度知的障害者を中心に、本人たちの意思とは関係なく生殖の権利が奪われました。今でも障害者は『がんばって生きている人の代表』のような扱いをされることが多いけど、恋愛にも性にも興味がある、ごく当たり前の人間だという姿が番組では映し出されていました」と分析した。

 記者は当事者として、障害者は頑固なのでも、甘えているわけでもなく、ただ今の日本は生活する上で困難を伴うから最低限の協力をしてほしいと願っているだけと考えている。それこそ多様性で、身体的特徴や体調によっては無理をできないこともあるが、可能な限りの努力もする。こちら側も、協力してくれた方々に感謝を忘れることはないし、人間である以上、恋愛したり性欲があることは当たり前のことだと思う。私たちは自身の考えをしっかり持ち、言われるがままにしか動けない“人形”ではないのだ。

 番組終了後に「勉強になった」「障害者の見方が変わった」「下心で見始めたけど考えさせられた」など健常者からも障害者からもSNSなどでコメントが相次いだ。同じく車椅子タレントの曽塚レナ(30)も「タブー視されがちな女性の、さらに障害者の性について語る出演者の方々に勇気をもらいました。10人いれば10人分のエピソードがあるのは私たちも同じ。『障害者はセックスできないもの』として切られてしまうのは非常にもったいないし、悲しい。ただの下ネタではない価値のあるテーマでした」と番組への感想を寄せた。

 しかし日本では、女性が性の話をオープンにしているだけで勘違いされるリスクを伴う。「誰とでもOK」という意味ではないのに、そこを誤解する風潮は根強い。クライアントもわざわざ好感度の低い障害者タレントを起用することはないだろう。芸能事務所プロデューサーには「性の話は、タブーではないけど、いろいろリスクがあると感じます」といった意見もある。日本が注目されている今だからこそ、それらの古い考えを変えるチャンスなのではないだろうか。伝統の「奥ゆかしさ」を守りながら、先進的で「誰もが生きやすい」日本を目指してほしい。われわれ障害者も一人の国民、決して「生産性がない人間」ではないのだから。(記者コラム・松岡 岳大)

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