【佐藤優コラム】北東アジアの安保環境激変も

 今月27~28日、ベトナムのハノイで、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が2回目の首脳会談を行うことになった。外交常識として首脳会談が行われれば必ず成果を出さなくてはならない。

  トランプ氏としては、北朝鮮が北米大陸に到達可能な大陸間弾道弾(ICBM)の廃棄を検証可能な形で金正恩氏に約束させれば、成果になると考えているのであろう。米国一国の利益ということならば、これで北朝鮮による核攻撃を免れることができるので、確かに成果だ。

 問題は、核兵器と短距離、中距離の弾道ミサイルだ。北朝鮮が核兵器の完全廃絶に応じる可能性は皆無だ。そのことを了解した上で、トランプ氏は金正恩氏とハノイでの第2回首脳会談を行うことに合意した。客観的に見て、米朝交渉は北朝鮮ペースで進められている。北朝鮮は、今後、核実験を行わず、これ以上、核爆弾を製造しないことについては、米国と合意するであろう。

 米国はそれを「北朝鮮の核兵器完全廃絶に向けた第一歩である」と肯定的に評価する。その結果、日本の全域が、核弾頭搭載可能な中距離弾道ミサイルの脅威にさらされることになる。現在も国際法的に朝鮮戦争は続いている。1953年以降、66年間、停戦状態が続いているに過ぎない。平和条約が締結され、北朝鮮と米国の戦争状態が終結すると、在韓米軍が撤退する可能性が出てくる。韓国の文在寅政権は、北朝鮮、中国との連携を強めていくことになる。

 特に今年の3月1日は、1919年のこの日にソウルで「三・一独立宣言」が発表された100周年にあたる。当時、朝鮮半島を統治していた日本は、憲兵隊を用いて独立運動を徹底的に弾圧した。韓国はこの記念日を北朝鮮と連携して祝おうとしている。韓国と北朝鮮の反日ナショナリズムが高揚する。その結果、北東アジアの安全保障環境が激変する可能性がある。

 北緯38度の軍事境界線は解消されるが、韓国と日本の間の対馬海峡が新たな緊張線になる可能性がある。(作家、元外務省主任分析官)

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