スケボ金メダル候補は競技歴5年の女子高生…四十住さくらの素顔に迫る

スポーツ報知
自宅に飾ってあるトロフィーの前でピースする四十住さくら(カメラ・矢口 亨)

 競技歴わずか5年の女子高生が金メダル候補に躍り出た。2020年東京五輪で新種目となったスケートボード・パークの四十住(よそずみ)さくら(16)=和歌山・伊都中央高2年=は、昨年の第1回パーク世界選手権を制し初代女王に。家族の支えのもと、全てをスケボーにささげる日常を送っている。「遊び方を知らない」というストイックなガールズスケーターの素顔に迫った。

 黒いスエットパーカの女の子が電車の座席に腰掛け、友達とスマホをのぞき込んでいる。時々目を合わせ、クスクス笑う。平穏な光景だ。ただ、傍らにスケートボードが立てかけてあるのが目を引く。彼女は世界一のスケーターなのだ。

 四十住は、まだ16歳。競技歴は5年。専門とするのはパークだ。複雑な形をしたくぼ地状のコースで、空中に飛び出した時に繰り出すトリックを中心に競う種目。昨年は5月の第1回日本選手権、8月のジャカルタ・アジア大会、11月のスケートボード・パーク世界選手権(中国・南京)で、いずれも「初代女王」に輝いた。もちろん、東京でも堂々の金メダル候補だ。

 「世界一はあまり実感がなくて。試合の後に『おめでとう』とか結構メールが来て。それでうれしくなりました」

 幼少の頃からスケボーに親しむ選手が多い中で、異例の短期間で世界の頂点に駆け上がった。あふれる才能が眠っていたのは間違いない。ただ誰よりも濃く、ストイックな5年間を過ごしてきたのも、また間違いない。出会いは小学6年生。学校から帰ると、自宅の庭で13歳上の兄・麗以八(れいや)さんが、友達とスケボーをしていた。“一目ぼれ”した。

 「それまでお兄ちゃんがスケボーをやっているのを見たことがなかったんですけど、カッコいい!と。楽しくてハマりました。ちょっとでもうまく回れたりしたら、お兄ちゃんに褒めてもらえる。褒められたくて、やっていましたね」

 兄からもらったボードで、放課後は毎日、庭や公園で練習した。和歌山には本格的な練習場がない。そのうち大阪のスクールや、県外のパークまで通うようになった。母の清美さん(53)が車で送迎していたが、娘が夢中になるほど家事や仕事との両立は大変になる。毎日の高速道路代やガソリン代もばかにならない。中学に上がり「本格的にスケボーがしたい」と頼まれた清美さんは、娘に覚悟を聞いた。

 「骨折ってでもやる、日本一になるくらいの気持ちでやるんやったら、応援する。そうでなければ、こんなことは続けられへんよ」という清美さんに、当時12歳の娘は毅然(きぜん)と答えた。

 「骨折ってもやるし、日本一になる」

 日常は大忙しだ。午前6時に起きて学校へ行き、午後3時過ぎに授業を終えると、そのまま母の運転する車で練習へ出かける。三重、神戸、大阪…。一番遠い三重の練習場までは往復5時間。車の中では眠ったり「YouTube」で技を研究する。4~5時間、練習に没頭し、帰宅はいつも日付が変わってから。サービスエリアで仮眠を取り、そのまま学校に行く日もある。よっぽどの風邪を引いたりしない限り休みはない。そんな生活を5年近くも続けてきた。

 「好きでやっているのでしんどくないです。お母さんの方がしんどいと思うし。難しい技を時間をかけて練習して、決まったときはうれしい。飽きたりしないです」

 両親は自宅の庭にコンクリートを敷いてパークを造り、いつでも練習できるようにした。清美さんは仕事を辞めバックアップに専念。車の走行距離は、ある年は5万キロにも達した。「タクシーより走ってますよ」と笑う。

 猛練習の成果で、こなす技の数は100を超えた。世界選手権では、2~3年かけて習得し、世界でもまだほとんど使う選手がいない大技「バックサイドノーズブラント180アウト」を決めた。日本代表の西川隆監督(53)も「練習熱心で負けん気が強い。他の選手をよく見て、勝つためにどうすればいいかを考える賢さもある。これからはもっとスタイル(オリジナリティー)に磨きをかけていければいいと思う」と、その能力を高く評価する。

 現在は伊都中央高の定時制に通う2年生。クラスメートとは仲良しだが、一緒に放課後に遊びに行く暇はない。

 「遊び方が分からなくて。テレビも全然見ないので、何が面白いかも全然ついていけていないんです」

 取材したのは超人気アイドルグループ・嵐の活動休止発表の直後だったが「メンバーは何となく…でも、はっきりは分からない」と首をかしげた。

 はっきりしているのは、今の目標が2020年の金メダルにあることだ。

 「お母さんがずっとサポートしてくれて、お父さんは1人で仕事を頑張ってくれた。お兄ちゃんはスケボーに出会わせてくれた人。金メダルを取って、みんなに掛けてあげたい」

 真夏の東京で、満開の笑顔を咲かせる日を夢見ている。(太田 倫)

 ◆四十住 さくら(よそずみ・さくら)

 ▽生まれ 2002年3月15日、和歌山・岩出市。16歳

 ▽競技歴 岩出小6年でスケボーを始める。岩出中1年で初出場したSSGカップ(神戸)で、レディース部門2位。16、17年の全日本アマレディース部門(ストリート)で2連覇。その後パークに軸足を移した。昨年6月には米アパレルメーカーのVANSが主催する「VANSパークシリーズ」のサンパウロ大会で優勝

 ▽趣味・特技 「スケボーです」

 ▽好きな芸能人 「いないというか、分からない」

 ▽好きな食べ物 清美さんが作る春巻き

 ▽子供の頃の夢 スケボーに出会うまでは保育園の先生になること。「子供が好きなので」

 ▽名字 北海道や北陸などで見られるが非常に珍しい。地域によっては「あいずみ」と読むことも

 ▽サイズ 159センチ、52キロ

 ◆東京五輪のスケートボード

 「パーク」と「ストリート」の2種目を実施。「パーク」は大きな皿やお椀をいくつも組み合わせたような、複雑な形をしたくぼ地状のコースで行われる。空中へ飛び出すエア・トリックが採点の中心となり難易度、独創性などを競う。世界選手権準優勝の中村貴咲(きさ、18)=木下グループ=は海外でも実績十分で、四十住と並ぶ金メダル候補だ。出場は各20人で、国・地域別の最大枠は3。出場権は今年の世界選手権上位者や、指定大会での獲得ポイントによるランキングで決まる。日本は男女各種目1人の開催国枠を得ている。

 ◆地元企業が支援に名乗り

 快進撃を続ける四十住に、地元企業が支援の名乗りを上げた。和歌山を本店として高級時計や貴金属を販売する株式会社オオミヤが昨夏からスポンサーとなり、資金面のバックアップをすることになった。

 それまで練習や遠征の費用は自己負担。海外遠征は数十万円単位の費用がかかることもあり、捻出は大変だった。「和歌山のために何かできないか」と模索していたオオミヤ社が存在を知り、昨春に連絡。同社の出水(でみず)孝典社長と四十住家が面談を持った。

 「世界一になりたい」と臆せず宣言した四十住に出水社長がホレ込み「さくらちゃんの夢は分かった。世界一になるまで応援したるから、行くとこまで行け!」と年間数百万円の援助を決めた。「お金の心配もなくなって、海外の試合でも全力投球できるようになった」と清美さん。世界選手権優勝のご褒美には、カシオの腕時計「G―SHOCK」が贈られた。

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