伊藤沙恵女流二段、反撃!鉄壁の受けで里見香奈女流名人に11戦ぶり勝利

笑顔で対局室から引き揚げる伊藤沙恵女流二段(カメラ・関口 俊明)
笑顔で対局室から引き揚げる伊藤沙恵女流二段(カメラ・関口 俊明)

 第3局が10日、千葉県野田市の関根名人記念館で行われ、先手の挑戦者・伊藤沙恵女流二段(25)が里見香奈女流名人(26)=女流王座、女流王将、倉敷藤花=に105手で勝ち、対戦成績を1勝2敗として反撃を開始した。本領を発揮する鉄壁の受けで対里見戦の連敗を10で止め、女流名人戦5番勝負は6戦目での初勝利となった。女流名人の10連覇は持ち越しに。第4局は18日、東京都渋谷区の将棋会館で行われる。

 終局後、伊藤は席を外した。気息を整え、盤の前に戻った。「4局目も指せることになったのでうれしい。あと、タイトル戦ではストレート負けが続いていたので結果はうれしいです」。一瞬、頬が緩む。最強の挑戦者が女流名人戦の舞台で見せた初めての表情だった。

 過去の教訓を生かした勝利だった。第1局は中盤の主導権争いに屈し、第2局は最後に猛追するも序盤につけられた大差が響いた。前局から2週間。敗北と向き合った伊藤は前夜、打ち明けた。「私は中終盤でどうにかする棋風ですけど、序盤からリードを奪える将棋を指さなきゃ、という思いはあります」

 導き出した秘策は、過去の直接対決16戦で例のない角交換振り飛車に誘導する序盤戦。桂損をいとわず積極的な仕掛けでペースを握ろうとする里見の攻めを、女流棋界随一と称される受けの技術で封殺した。「里見さんとは経験したことのない形。一手一手、考えながら新鮮な気持ちで指せました」。昼食休憩明けの▲3六角(途中図)、52分の長考からの▲5四歩~▲4四角など重厚な手順でスキを与えずに完勝した。「良くなってからも気を引き締めて指そうと…。勝ちきることができて良かった」

 強者に挑む勇気を与えられた一局が直前にあった。今月5日、順位戦C級1組で昇級を目指した藤井聡太七段(16)に近藤誠也五段(22)が競り勝った将棋。「近藤さんの熱い気持ちを感じた一局でした。藤井さんに注目が集まる中、過去の対局でも負けていた藤井さんへの思いを」。伊藤にとって、近藤五段は奨励会時代の戦友。「当時から居飛車党本格派で力のある会員でした。私が1級の頃、初段の近藤さんに勝てたことはすごく自信になったんです」。同志の勝利に、どこか背中を押された。

 対里見戦の公式戦連敗を10で止め、シリーズの流れを変えた。次局は逆王手を目指す一局になる。「いつも通り一生懸命、集中して指したいです」

 初挑戦した昨年の第3局。同じ対局室の同じ場所に座り、3連敗を喫して涙をぬぐった。あれから1年。手にしたのは、ただの白星ではない。過去を乗り越えた成長の1勝。もう涙はいらない。(北野 新太)

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