黄金時代がよみがえったラグビー大学選手権…58歳カメラマン「前へ」の精神思い出す

専大CTB・中井から、顔面タックルを受けた早大HB・今泉清が、ハンドオフでしのいで突進
専大CTB・中井から、顔面タックルを受けた早大HB・今泉清が、ハンドオフでしのいで突進
前半26分、天理大SO・松永のキックをチャージする明大SH・福田
前半26分、天理大SO・松永のキックをチャージする明大SH・福田

 「もう一歩前へ!」我が母校、明治大学内の男子トイレに立つと、この言葉が目に飛び込んでくる。故・北島忠治監督の「前へ」の精神が、ラグビー部員だけでなく、学生にもすり込まれている。そして社会に出ても、ふとしたことで思い出す。

 1月12日の全国大学ラグビー決勝の天理大と明大の試合を取材していて、この言葉を思い出した。大学選手権9連覇中の帝京大を対抗戦で破った明大と準決勝で圧勝した天理大の日本一をかけた決戦だった。

 下馬評では天理大有利で、開始3分の天理大フッカー・島根主将の先制トライに圧倒されたが、その4分後の前半7分、明大FB・山沢の2人飛ばしのパスでウィング・山崎が右隅に同点のトライをあげ雄叫びを上げた。前半22分にも勝ち越しのトライを決めたウィング・高橋が、仲間と抱き合う。久しく見られなかった明大フィフティーンの強い気持ちが感じられた。

 前半26分、蹴り出そうとする天理大SO・松永のボールに明大は二人がかりのチャージで、SH・福田がはたき落とし、もう少しでトライというプレーにつなげた。

 この必死さは、今までの明大が相手に散々やられてきたことだ。このプレーを見て、優勝を確信した。

 後半、2トライを返され5点差、昨年の帝京大との決勝を連想してしまったが、明大フィフティーンは最後まで気持ちが途切れなかった。ノックオンでホイッスルが鳴った。ノーサイドになっても、明大・児玉は最後までタックルで倒すプレーを続け、気持ちが切れなかった。その気迫は、かつての早明戦の熱戦にも重なる。

 早明の黄金期を支えた松尾雄治、吉田義人、元木由記雄、本城和彦、今泉清、堀越正巳、五郎丸歩らのラガーメンが思い出される。1980年代の黄金時代、明大・藤田剛、河瀬泰治らとオール早明戦で対戦した早大・清宮克幸(ヤマハ発動機前監督)は「タックルで止めようとしても、みんなひかれていく、仰向けに倒され、その上を明治のFWが空を飛んでいった」と語ったほど。その黄金期の明大ラグビー部を「明大・藤将(とうしょう闘将)魂のタックル・トライ」と1面見出しで報じたスポーツ紙を見て面白いなあと思ったのが、この仕事を始めるきっかけだった。

 学生時代に国立競技場で見た大学選手権を、58歳の今もカメラマンとして撮り続けている。

 今でも心に残る1枚の写真がある。大学選手権出場をかけた1987年の交流試合・早大対専大戦で、左タッチライン際を快走する早大FB・今泉に専大センター・中井が顔面にタックル。今泉はハンドオフでしのいで突進し、気迫あふれるプレーを見せた。

 「One for all, All for one」(一人は全員のために、全ては一つのために)とよく言われるが、北島忠治監督は、「主役はボールだ。主役を生かすチームは強いし、殺すチームは弱い。生かすには身を捨てる勇気と、広い視野と洞察力、それにカンも必要だ。その精神とは、つまりボールを生かせということなんだよ」と自著で述べている。

 そして今年の大学選手権決勝。明大は、相手と対面してパスか突破かを惑わせ、沈み込んで相手の視界から消えるサブマリンタックルを炸裂させ相手のボールを殺した。低い高速タックルにはレスリングの練習を取り入れたという。これを生かして22季ぶりの大学日本一を成し遂げた。

 今年の年賀状に「猪っ突猛進!前へ!」(ちょとずつ、もう少しでも前へ!)としたためてみた。初心を忘れず、面白い写真のために「前へ!」出て、カメラを止めるな、と自分に言い聞かせている。(写真部記者コラム・佐々木 清勝)

専大CTB・中井から、顔面タックルを受けた早大HB・今泉清が、ハンドオフでしのいで突進
前半26分、天理大SO・松永のキックをチャージする明大SH・福田
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