フジテレビ「コード・ブルー」プロデューサー電撃退社の謎…社長賞表彰直後に“卒業”

映画版も実写邦画歴代5位の興行収入を記録するメガヒット作品となった「コード・ブルー」の出演者たち
映画版も実写邦画歴代5位の興行収入を記録するメガヒット作品となった「コード・ブルー」の出演者たち
突然の「コード・ブルー」プロデューサー退社への思いを明かしたフジテレビの石原隆取締役
突然の「コード・ブルー」プロデューサー退社への思いを明かしたフジテレビの石原隆取締役

 衝撃的な退社劇だった。

 昨年7月に公開され、実写邦画の歴代5位となる興行収入92億円のメガヒットを記録した映画「劇場版コード・ブルー」のプロデューサー・増本淳氏(43)が、先月8日にフジテレビを退職していたことが分かった。

 00年の入社以来、制作畑のエースとして、山下智久(33)主演の同局系ドラマ「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命―」に08年の第1作から携わってきた。同局の編成・制作の最高責任者・石原隆取締役(58)をして「1日24時間、『コード・ブルー』のことを考えている男」と言わしめた“スペシャリスト”の電撃退社だった。

 17年7月期に放送されたドラマ版第3弾も不調が続いた看板ドラマ枠「月9」を復活に導く好視聴率を記録。勢いに乗って制作した劇場版映画までも大ヒットさせた直後だっただけに、初めて聞いた瞬間、「なぜ、このタイミングで?」という疑問が浮かんだ。

 だから、先月25日、東京・内幸町の帝国ホテルで開かれた今年最初のフジテレビの定例社長会見で宮内正喜社長(74)と石原氏に直接、聞いてみた。

 「業績復活の象徴としてドラマの復活を目標に掲げているフジにとって、今回の優秀な作り手の退職は痛いのでは? 有力コンテンツとしての『コード・ブルー』の局外流出の危険まであるのではないか」―。

 即座にマイクを手にした宮内社長の答えは温かさにあふれたものだった。

 「ちょうど『コード・ブルー』の映画がヒットして、新年に社長賞を贈呈したんです」と、社長賞表彰直後の退社だったことを初めて明かした上で「彼本人のことに関しましては、企業体質として、フジテレビで育っても独立をしたり、別の会社に行って自分の才能をより伸ばしたいという希望はできるだけ意向に添えるようにすると。社長賞の場で本人も(今後も『コード・ブルー』に関わることを)宣言しました。これからもフジの仕事をしないわけでもないし、今後も彼の才能が開花するよう応援したいと思います」と続けた。

 石原氏も「増本君は、とても優秀なプロデューサーと個人的には思っています。今後もフジテレビと良好な関係で、外の人にはなるけれども、作り手の一人として、我々のシンパになってくれればと思います。活躍を期待しています」と話し、同局作品としての「コード・ブルー」に関しては「(続編など)今後のことは今は申し上げられないというところです」とだけ答えた。

 石原氏は、1歳年下のヒットメーカー・三谷幸喜さん(57)と組んで95年の「王様のレストラン」、94年~06年の「古畑任三郎」、さらには「HERO」「やまとなでしこ」と言った同局の大ヒットドラマを数多く手掛けてきた「ドラマ作りのマイスター」として広く知られる存在だ。

 17年に編成・制作・宣伝の総責任者である編成統括局長に就任すると、「みなさんのおかげでした」「めちゃ×2イケてるっ!」など長年続いた大型バラエティーを軒並み終了させる「史上最大の改編」を敢行。フジ改革の先頭に立っていた昨年3月に単独インタビューした際も「今、厳しい視聴率が出ているのは、フジと言えばこれっていう新しいものがないということ。視聴者に見たいと思わせる番組を作るしかない」と率直に語り、150人以上いる同局のドラマ、バラエティーに携わる社員についても「今、この瞬間も多くの才能ある人を僕は見逃しているのかもしれません。本当は潜在的にすごいヒットメーカーになる人を」などなど、1時間以上に渡って本音を明かしてくれた。

 私自身、作り手としての石原氏の手腕には以前から敬意を抱いてきた。我が家には「王様―」「古畑―」のDVD全巻セットがズラリ。これらの作品を家族で繰り返し楽しんできた身としては“石原プロデューサー”は3年前に名刺交換をする前から、ずっと憧れの存在だった。

 だからこそ、さらに、その本音が聞きたくて、その大きな背中を追いかけて食い下がった。

 その場でも「増本君は『コード・ブルー』の脚本を書くために医学を学び、手術だってできてしまうほどの知識を手に入れていた。そのくらい作品に対して本気なんです」という興味深いエピソードを明かしてくれた石原氏。だからこそ、前のめり気味に聞いてみた。

 「命がけでドラマを作る増本氏には往年の石原さんと同じ雰囲気を感じます。フジに残っていれば、10年後には石原さんのような局の柱的な存在になっていたのではないでしょうか。フジにとって、もったいない気がします」―。

 余計なおせっかいそのものの私の発言を静かに聞いていた石原氏は一拍置くと、「でも、彼の人生ですから」―。静かな声でそう言った。

 そう、これこそが宮内社長が会見で口にした「フジで育っても独立をしたり、別の会社に行って自分の才能をより伸ばしたいという希望はできるだけ意向に添えるようにする」という懐の深さ。さらに言えば、そこには今後は社員や部下としてではなく、「コード・ブルー」という優良コンテンツを取り扱う“取引相手”としての増本氏との付き合いを意識したニュアンスもまたあるのだろう。

 今後はフリーのプロデューサー、脚本家として活動するという増本氏。退職前に同氏と話し合いの場を持ったという石原氏には、その席で「とにかく『コード・ブルー』の脚本を書きたい」という希望を明かしたという。

 そんな話を終えた後、石原氏は最後にもう一度、「彼の人生ですから」と繰り返した。そこにあったのは、年齢こそ離れていても確かに存在する物作りのプロ同士の幸福なリレーションシップ(関係性)だった。

 一時は絶不調とも言われたフジのドラマだが、現在は確実に回復傾向にある。3クール連続初回視聴率2ケタ超えを果たした「月9」枠の「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」「SUITS/スーツ」など、どの作品にも他局のドラマにはない独特の個性があるのは確か。

 その根底にあるのは、たとえ局を離れても、脈々と受け継がれるプロの作り手としてのプライド。それが確かに透けて見えた社長会見の夜だった。(記者コラム・中村 健吾)

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