【駅ペン】箱根駅伝、偵察メンバーならではの掟と悲哀

一斉にスタートする選手
一斉にスタートする選手

 ちょうど30年前。昭和最後の箱根駅伝を、私は東洋大陸上部の1年生選手として迎えた。母校は今では2年連続で往路優勝を果たすような強豪となったが、当時は予選会の常連で常に本戦出場はギリギリ。そのチームで私はメンバー入りギリギリの実力だった。登録選手発表の前日、高校の恩師に電話をかけた。「もし自分の名前が(主力が走る)往路にあったら走らない、と思ってください」と(結果的に8区に登録され、そのまま出場することができたが、区間14位の大ブレーキでした)。

 平成最後の今大会でも私と同じような電話をした選手が存在する。それは箱根駅伝特有のルールとして「当日変更」があるからだ。昨年12月29日に1~10区と補欠6人が登録され、往・復路とも当日朝に補欠選手を変更で投入できる。各校の駆け引きも見どころの一つだ。

 この日も21組の当日変更があった。エースが当日変更で出場する以上、出番がなくなる選手がいる。欠場が前提の選手は、「偵察メンバー」と呼ばれる。

 青学大ではエースの森田歩希に代わってルーキーの湯原慶吾の出番がなくなったが、あくまで前向きだった。「同じ茨城の高校出身の森田さんが区間新記録で走ってくれて感動したし、刺激になった。今回は偵察メンバーが僕の役割だった。来年は森田さんのような役割ができる選手になりたい」

 ただ、偵察メンバーならではの掟(おきて)と悲哀がある。区間登録されると当然、周囲は出場を楽しみにするが、チームの最高機密のため、故郷の家族や恩師にも気軽に話すことはできない。「家族や先生をガッカリさせてしまった分、来年は絶対に走ります」と言い切った。

 当日変更ルールは戦後の復活大会から存在する。1964年に中大が6連覇を果たした時のエース・碓井哲雄さん(77)は、「当時、既に当たり前のようにあった」と証言する。一部で「姑息(こそく)」「外れた選手のことを考えていない」という批判があるが、箱根駅伝を志す学生ランナーは、このルールを受け入れている。(箱根駅伝担当・竹内 達朗)

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