中日ファンなのにWEBでスポーツ報知をチェックする物好きな皆さん、あけましておめでとうございます。新年1発目の記者コラムは、黄金ルーキー・根尾昂内野手(18)=大阪桐蔭=ではなく“肩幅番長”こと新指揮官・与田剛監督(53)でもなく…、抑えとして本格化が待ち遠しい、あの投手の秘めたるエピソードをご紹介したいと思います。2年目を迎えた最速157キロの剛球右腕、鈴木博志投手(21)です。昨年末に弊紙大阪アマ野球担当・伊井亮一記者が根尾らについて書いた“小ネタ集”スタイルでお楽しみください。
▼松坂のボケに
昨年5月30日のオリックス戦(ナゴヤドーム)で1―0の8回から登板したが、4点を奪われて逆転黒星を喫した。6回無失点で降板した松坂の勝利を消してしまった責任を一身に背負い、降板後、悲痛な表情でレジェンド右腕に謝罪した。そんなヒロシに松坂は、ひと言「どんまいける!」。
十数年前に流行したお笑いタレント・まいけるのギャグにピンと来なかったヒロシ。ここまでは紙面でもご紹介したとおりだ。
後日、改めて「どんまいける事件」を振り返った際、こんなことを言っていた。「『どんまいける!』って言われて何て返したかですか。まあ普通に『あ…ああ、すみませんでした』って。全然意味が分からなくて、自分の聞き間違いかなと思って『もう一度お願いします』と言おうと思ったんですが、そこは空気を読んでやめときました」。危うく松坂を2度スベらせるところだった。
▼腹芸
痛打を浴びても落ち込まず次の試合で黙ってリベンジ…という“腹芸”ではない。リアルにおなかをグリングリン上下させる方の腹芸を完璧にマスターしているのだ。トレーニング時のTシャツ姿などリクエストすれば「これって脂肪の下にちゃんと腹筋がないとできないんですよ。トレーニングになるかもしれない」などと言いながら披露してくれるダイナミックな動きは、ちょっと感動を覚えるほど、見ていて楽しい。
ちなみに腹でたくらむ方の腹芸は「打たれて頭がゴチャゴチャになったときこそ(記者に)しゃべって整理した方がいい。逃げずに対応するべき」と言うだけあって、こちらも得意かも。
▼最高のママ
母・英美さんがとにかく最高だ。昨年1月に地元の静岡・掛川市で自主トレを公開した際には「母が作ってくれました」と和洋折衷に加えて母の故郷・中国のテイストも織り込んだ豪華おせち料理の画像を公開。「好きな食べ物はアボカド。母の作るアボカドシュリンプサラダを毎日食ってました」と“最高のママ”に感謝した。
ママもヒロシが1軍にいる間は、ナゴヤドームでの試合はほぼ毎試合観戦。試合後は、記者のぶら下がり取材を受けながらタクシー乗り場に向かうヒロシを出待ちするのが常だった。
ママ「きのうあげたイチゴ、食べた~?」
ヒロシ「うん。うまかった。もらってすぐ食べた」
ママ「すぐって、すぐ~?」
ヒロシ「うん。すぐ」
ママ「ダメじゃな~い! 洗ってから食べないと~。ねえ、おなか痛くなったらどうするの~」
ちょっと拙い言葉がカワイイ英美さん。ほのぼのした会話を毎日聞かされて、多くの報道陣も“最高のママ”に癒やされた。
▼食いしん坊
ラーメン店で替え玉を17杯注文した経験があったり、ナゴヤ球場では常に菓子パンを手にするなど、食いしん坊エピソードには事欠かないヒロシ。川端にサヨナラ被弾してプロ初のセーブ失敗を経験した昨年7月21日のヤクルト戦(神宮)の直後も、「人生最悪の日です」と言った直後に「これ最高ッスね」と言いながらサムギョプサルを腹いっぱい頬張った。
そして昨年11月のある日のこと。社会貢献活動の一環として、名古屋市内の小学校を訪問した。仲良く給食を食べていると、子供たちに「ヒロシ選手も一緒にじゃんけんしようよ!」と誘われた。訳も分からずじゃんけんに参加すると、あれよあれよと10人の児童をなぎ倒して勝ち残ってしまったのだ。勝利者に手渡されたのは1本だけ余っていた牛乳。断る理由もなく、腰に手を当てて一気に飲み干した。
するとちびっ子たちがじゃんけんを再開した。今度のターゲットは、やはり1本だけ余っていた乳酸菌飲料。「これも残ってたんだ! むしろこっちの方が良かった」と気づいても後の祭り。連チャンでじゃんけんに参加するのも子どもじみている。指をくわえて見守るしかなかった。
給食も終わり、子供たちと歓談を始めた。そこに何やらちょっとオマセな雰囲気な女の子が現れて「これ、私の。あげる」と小さな紙片を手渡してきた。「なんだろう」とのぞき込むヒロシ。その様子を見ていた記者が後ろから「お、プリもらったんだ」と声をかけると、必死の形相で振り返り、こう叫んだのだ。
「え? プリンも残ってたんですか!」
違う違う、プリントシールの「プリ」だよ。
(記者コラム・田中 昌宏)