「今のままじゃ、卒業生と話ができないんだよ」戸叶尚氏が学生野球資格回復研修会を受講した理由

大魔神・佐々木とともにヒーローインタビューに臨む横浜時代の戸叶氏
大魔神・佐々木とともにヒーローインタビューに臨む横浜時代の戸叶氏

 12月14日に都内で行われた日本野球機構(NPB)主催の「学生野球資格回復研修会」を取材した。

 元プロ野球関係者(独立リーグや国外のプロ野球も含む)が高校生、大学生を指導するためには、かつては一定期間の教員経験など高いハードルが課せられていたが、2013年に学生野球憲章が改定され、NPBと日本学生野球協会がそれぞれ主催する研修会を計3日間受講し、審査をクリアすれば指導できるようになった。

 NPBが若手現役選手を対象に行っているセカンドキャリアに関するアンケートでは、引退後にやってみたい仕事として昨年まで5年連続で「高校野球の指導者」が1位だった(今年の1位は「一般企業の会社員」)。今年の研修会を受講した136人の元プロ野球関係者の中にも、高校野球の監督やコーチを目指している人が多かったはず。ただ、中には違った理由で受講した元プロもいた。

 この日の研修会では、最後に受講内容について記述する小テストが行われた。他の受講者が答案を提出して退室した後も、1人だけ1時間近く残ってペンを走らせていたのが、投手として横浜(現DeNA)、オリックス、楽天でプレーした戸叶尚氏(43)。私が横浜と楽天で担当記者をしていた頃は、茶髪にピアス(野村監督就任時に慌ててやめた)、オフにはレーシングカーでサーキットを爆走するなど、やんちゃなタイプだった。ようやく答案を仕上げて帰路につく戸叶氏を「机に向かってる姿は似合わないね」と冷やかすと、「いっぱい書いちゃったよ~」と苦笑い。現在は都内でボーイズリーグの指導をしていると聞いていたので、次は高校野球の指導者を目指すのかと思って聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

 「今のままじゃ、卒業生と話ができないんだよ」

 硬式のボーイズでプレーする中学生の多くは高校野球で甲子園を目指す。中には環境や指導者が変わって行き詰まってしまう選手もいるだろう。だが、悩みを抱えた高校球児が、中学時代の指導者に相談するにも、相手が元プロ野球関係者の場合はルール上“アウト”だ。戸叶氏も同様の経験があるという。「アドバイスしたとかってことが問題になったら、僕はともかくとして選手や高校に責任が行っちゃうのが困る。この資格があれば、相談に乗ってあげることはできるからね」。手塩にかけた教え子への“アフターケア”が今回の受講の目的だった。

 阪神やメジャーでプレーした元投手の藪恵壹氏(50)の受講目的は「高校野球をしている息子と野球の話がしたいから」。さすがに親子の会話にまで目くじらをたてる人もいないだろうが、試合の応援に行っても息子のチームメートとうかつに話せないといった息苦しさを解消するために資格回復を決めたという。

 他にも「指導者」ではなく単なる「先輩」として、気軽に母校のグラウンドに行けるようになりたいという年配の元選手もいた。競技人口減少への対策、球界全体のレベルアップといった目的もあって進みつつあるプロとアマの交流。もちろん一定のルールは必要だし、将来的にはサッカーのようにランク分けされたライセンス制度が導入される可能性もある。いずれにしろ、プロの技術や考え方、さらにはグラウンドを離れた部分も含む生きざまといったものが、夢を持ってプレーしているアマチュア選手に還元されていく環境作りが、これからも後戻りせずに進んでいくことを願いたい。(星野 和明)

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