無冠になった羽生善治前竜王が原点の「八王子将棋クラブ」で再出発の一手

閉所される八王子将棋クラブをサプライズ訪問し、指導対局を行う羽生善治前竜王
閉所される八王子将棋クラブをサプライズ訪問し、指導対局を行う羽生善治前竜王
談笑する羽生前竜王(右)と席主の八木下征男さん。壁に掛かった詰将棋は、羽生少年が創作した“伝説”の「飛車3枚詰将棋」
談笑する羽生前竜王(右)と席主の八木下征男さん。壁に掛かった詰将棋は、羽生少年が創作した“伝説”の「飛車3枚詰将棋」
1982年夏の八王子将棋クラブ。前列左端が小6の羽生、同左から3人目は後に十八世名人資格保持者となる森内俊之現九段
1982年夏の八王子将棋クラブ。前列左端が小6の羽生、同左から3人目は後に十八世名人資格保持者となる森内俊之現九段

 将棋の羽生善治前竜王(48)が23日、今年限りで閉所される出身道場「八王子将棋クラブ」(東京都八王子市)をサプライズ訪問した。21日に竜王を失冠し、27年ぶりの無冠に転落してから2日。7歳の時から通う場所で来場者と交流し、原点回帰。恩師の席主・八木下征男さん(75)に感謝を告げ「自分自身は前に進んでいかなくちゃいけないと思っています」と未来を見据えた。クラブは24日、最終営業日を迎える。

 四方から駒音が鳴る場所に現れた羽生は、別れを惜しむ来場者たちの前であいさつをした。「大変残念ですけど、長年にわたって道場を続けてこられた八木下さんに心から『お疲れ様でした』とお伝えしたいです」。思い出の詰まったクラブは拍手に包まれた。

 永世7冠が姿を見せたのは午後0時36分。山口県下関市で行われた第31期竜王戦7番勝負第7局で投了を告げ、無冠になったのが21日午後6時49分。わずか42時間後。恩師は「無理しなくて大丈夫ですよ」と声を掛けたが、約束は守るのが羽生の流儀だった。

 指導対局では子供ら7人と盤を挟み、丁寧に教えた。「道場の風景も雰囲気も変わってないですね。まだ小さい子供たちが通っているんだな~と思いました」

 クラブは1977年に開所。羽生は翌年から通い、将棋の魅力に触れ、棋士への道を歩み始めた。「クラブ、八木下さんと出会わなければ将棋の道には進んでいません」。計13人の棋士が巣立つ名門になったが、ビルの老朽化による改修工事と八木下さんの体調を考慮し、幕を閉じる。「寂しいですし、時間がたてば違う感慨が生まれるのかなと思います」。八木下さんは「羽生さんが来てくれていなければ、とっくに畳んでいました。本当に感謝しています」という言葉を繰り返した。

 27年ぶりの無冠となり、42年間続いた大切な場所は歴史に幕を下ろす。「クラブが閉じてしまうのは私にとっても大きな節目です。でも、(無冠は)自分自身にとっても残念なことではあるんですけど、自分自身は前に進んでいかなくちゃいけませんので」

 羽生は午後5時の営業終了までクラブに残り、懐かしい記憶を辿った。2日前、絶望と屈辱を見つめていた表情は、少年の頃のような笑顔に変わっていた。(北野 新太)

閉所される八王子将棋クラブをサプライズ訪問し、指導対局を行う羽生善治前竜王
談笑する羽生前竜王(右)と席主の八木下征男さん。壁に掛かった詰将棋は、羽生少年が創作した“伝説”の「飛車3枚詰将棋」
1982年夏の八王子将棋クラブ。前列左端が小6の羽生、同左から3人目は後に十八世名人資格保持者となる森内俊之現九段
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