ハローワークから3大メジャー実況へ…「コブラツイストに愛をこめて」著者・清野茂樹アナに聞く【後編】

史上初めて3大メジャー団体の実況を達成した清野茂樹さん。ラジオ番組「真夜中のハーリー&レイス」もマニアに人気だ
史上初めて3大メジャー団体の実況を達成した清野茂樹さん。ラジオ番組「真夜中のハーリー&レイス」もマニアに人気だ

 このほど著書「コブラツイストに愛をこめて」(立東舎)を上梓したフリーアナウンサー・清野茂樹さん(45)へのインタビュー後編。プロレス界が「冬の時代」の真っ只中だった中でのフリー転身から「3大メジャー」の実況を史上初めて担当するまでの道のり、さらには今後の夢について直撃した。(構成・加藤 弘士)

 現在、新日本プロレスのV字回復もあり、会場では「プ女子」と呼ばれる女性客も増加した。マット界は再び活況を取り戻している。しかし、清野さんが広島エフエム放送を退社して上京し、フリーに転向した頃は総合格闘技に押され「冬の時代」と呼ばれていた。

 「冷え切ってましたね(笑)。相当つらかったです。2006年に上京して、最初に新日本プロレスの後楽園ホールにあいさつに行ったんですよ。すると、観客の少なさに驚愕するわけですよ」

 「次」を決めてから辞表を出すのが転職の鉄則。だが、清野さんは「迷わず行けよ、行けば分かる」の猪木イズムを貫いてしまった。

 「全く何も決まっていない状態で東京に来たんですよね。行った方が早いんじゃないかと思って。無職なので、まずはハローワークに行き『とりあえずプロレスの実況をやりたいんだけど』と話したりして(笑)。ありがたいことに、仕事がゼロだったことはないんです。1月に来て、最初の仕事は紹介頂いた、千葉の稲毛で行われた新車発表会の司会でした。雪の日、朝7時に来てくれと言われて。恵比寿から大雪の中、総武快速線に乗って。それがフリーの初仕事でした」

 3月に両国国技館へプロレス観戦に行くと、サムライTVのプロデューサーに再会した。フリーになった旨を伝えると、実況の仕事が舞い込んだ。業界に元気がなかった時代。それでも夢が叶った。十分に準備して実況席に臨み、ほとばしる情熱をマイクにぶつけた。冬の時代? どうってことねえよ。季節は巡る。きっと春は訪れるはず―。

 「プロレス人気がV字回復するまでは、長かったですね。キツかった。なりたいものになれたし、行きたいところに行ったら、思っていた世界と全然違うという。とにかくお客さんがいない。盛り上がっていない。あれ? 俺は古舘さんがやっていたことをやりたかったのに、全然違うよ!と。オープニングに放送席で喋るんだけど、後ろに全然人がいない。あの頃、託せる選手と言えば棚橋選手、中邑選手。何とかこの二人を人気者にしたいという気持ちはすごくありました」

 転機は2010年の春だった。パーソナリティーを務めるラジオ日本のレギュラー番組「真夜中のハーリー&レイス」がスタート。同時に「K‐1」「DREAM」の全大会のペイ・パー・ビュー実況の仕事が舞い込んだ。15年には新日本プロレス、WWE、UFCと3大メジャーの実況を史上初めて達成した。実績が信頼を育む好循環に突入した。

 「僕はプロレスと格闘技、両方できなきゃいけないと常々、思っていて。『両方できてストロングスタイルだ』という古い考えがあるんです。それを実践してきたから、両方できたのかなと思うんですね」

 安定した局アナの仕事から離れた12年前の決断は間違っていなかったと、胸を張って言える。

 「あのまま広島にいて、毎月お給料をもらって、日々の仕事をやっているよりも、東京に来るとプロレスの近くにいて、発信する側になりますからね。本当に来て良かったなと思います」

 これまでの実況人生とプロレスへの愛をつづった一冊。どんな人に読んでもらいたいですか。

 「プロレスを好きな人はもちろんですが、プロレスファン以外に読んでほしい、という思いも強いです。転職を考えている人や、これから何をやりたいのかがまだ固まっていない大学生とかに読んでいただきたい」

 プロレスの実況にラジオのパーソナリティー、さらには「ももいろクローバーZ」のライブでのレポーターなど、清野さんのしゃべり芸は広い守備範囲を誇る。ズバリ、小学生の頃に憧れた古舘さんを、超えられた部分はありますか。

 「プロレス実況は古舘さんよりも長くやっていますよね。古舘さんは10年。僕は12年ですから。長さだけですね、残念ながら(笑)。あとはプロレス実況に関しては現役ですから、今現在なら、僕の方がうまくできるかな」

 今後の夢について聞くと、迷いなくこう言い切った。

 「古舘さんを超えたいですね。古舘さんがやったことは、全部やりたいと思っています。あの方はプロレスの世界に収まらなかった。オーケストラの中に入って実況したり、アフリカの部族の運動会を実況したり…実況という技能を『トーキングブルース』のようなライブにまで昇華していた。実況を『プロレスのおまけ』としてあと20年、やりたくないですもん。実況というものだけで表現できるものが何かあるはず。それを追究していきたいですね」

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