俳優・佐藤二朗(49)が初めてMCを務めるフジテレビ系クイズバラエティー「超逆境クイズバトル!! 99人の壁」(土曜・後7時)が3日、レギュラー化2回目の放送を迎える。初回に単発特番時代を含め最高視聴率を記録。完全復活を期すフジテレビの期待を集める今が旬の俳優は「僕は精神年齢が8歳。そのままの自分で主宰者を演じるつもりでやっています」と笑顔を見せる。(中村 健吾)
100人の出場者の中から選ばれた1人が自分が得意なジャンルでクイズに挑戦。四方を囲んだ残り99人を相手に早押し形式で対戦するという全く新しい形式のクイズバラエティーが「99人の壁」。格闘技場を模したセットの真ん中でまさに四面楚歌の状態で難問に挑むチャレンジャーの隣に優しく寄り添いつつも、当の素人さん以上に額に汗をかき、時に堂々とカンペを要求。常にテンパりながら、なんとか番組を進行しようと悪戦苦闘しているのが佐藤だ。
この日は一般公募で選ばれた23人の出場者に加え、将棋の加藤一二三九段とマジシャンのMrマリックが5問連続正解での賞金100万円に挑戦。午後3時開始の収録が終わった瞬間、時計の針は午後8時を回っていた。
ある時は「誤答だらけです。後藤久美子!」と力いっぱいのオヤジギャグを飛ばし、子供の回答者には「いいんだよ、オジサンに敬語で話さなくても」と優しく声をかけるなど“今まで見たことがない”新鮮過ぎるMCぶりを見せたベテラン俳優は収録後、「疲れました。毎回、ぐったり疲れますね」―。イスに座ると、正直にそうつぶやいた。
元々、総合演出を務める千葉悠矢ディレクター(25)がフジテレビ入社2年目だった昨年、社内コンペを勝ち抜いて実現した企画。千葉氏の熱望で佐藤の初MCが実現した。
「最初は『なんで俺に』と、お断りするつもりだったんですけど、企画書が熱くて。『佐藤二朗さんしかいない!』みたいな。その術中にはまってしまったわけですけど」と振り返る。
「基本的に嫁には相談したりはしないんですけど、今回ばかりは新しいチャレンジだったので、相談しましたね」。03年に結婚した妻に話したところ、「最初は『断った方がいいよ』って言ってたんです。『あんたがそんな回せるわけない、その場を』って。『ずっと、アタフタしているだけだと思うし、私も見てられないし』って。だから、やめた方がいいよって言われたんですけど、まあ、千葉(ディレクター)の考えがそれでいいと言うような趣旨だったんで。レギュラー化の時も『土曜の夜7時らしいんだけど、これ、俺、やった方がいいかな?』って言ったら、『やりなよ。やった方がいいと思うよ。こんなこと言ったら悪いけど、長く続く番組じゃないと思うから、与えられた期間を全力でやりな』って。それを聞いたスタッフは大爆笑してました。シャレになっているって」
本人は「セット的にもクイズの闘技場的雰囲気なので、MCとか司会者というより主宰者を演じるつもりで。『主宰・佐藤二朗』として演じているつもりでやっております」と言うが、この日の収録では9歳の子供から78歳の加藤九段まで出場者1人1人と時には友達のように、時には父親のように接し、リラックスさせる人柄の良さが自然とにじみ出ていた。
「あまり、1人1人に寄り添ってとか、イジろうとかは実は全く考えてなくて。役者をやっている時でも、やっぱり、自分の決められたセリフはあるものの、その場の状況に応じて、その時に起きたことや相手役を受けるとか、そういう所は決まり切ったことではないので。相手役がどんな芝居するか分からないじゃないですか。俳優の仕事をやっていても相手役が本番でどんな芝居してくるかとか、微妙なニュアンスとかを受けるっていうのが大事なんで、そういうつもりでやってます。イジろうとか、それぞれに寄り添おうとか考えるよりは、その場で起きたこととか皆さんの話をちゃんと聞こうと。そういうことを思って、後は居酒屋にいる気分でやってます」。
「主宰者を演じて、その場に起きたことに反応しようと思ってやっているだけですけどね」と言うが、収録現場では明らかに演技とは違う多彩な役割をこなしている。
「多少の緊張はあるのかな。正直なこと言うと、収録の途中から頭がボーッとしてくるんですよね。多分、お芝居とは全然違うギアであったり、筋肉であったり、頭脳の部位を使っているんでしょうね。毎回、疲れますしって感じですかね」
回答者の中にいる子供の扱いも抜群にうまいが、「僕が精神年齢が8歳くらいなんで。彼らにすれば、『あっ、タメ(年)だ』って、10歳の子にしたら『二つ下だ』って思うんじゃないですかね。(現在、6歳の)息子が生まれる前から、こんな感じですから。精神年齢は低い方がいいかなと。座右の銘で良く聞かれて言うのは『芝居はなるべく真摯に。精神年齢はなるべく低く』って。僕が作った言葉なんですよ。ちゃんと分別のある、リスクのある無茶なことは計算してしないとか、大人の分別を持って無茶なことをしないっていうのは、ちゃんとした大人の人に任せて、僕ら浮草稼業の役者はちょっと無茶をやらかすというか、そういう所があっていいと思うんで、こういう(MCを)引き受けたり、この間は49歳で初ミュージカルをやりましたし。そういう意味でも精神年齢はいつまでも低くいたいなと。ただし、芝居に関しては誠実でなきゃいけないなと」
福田雄一氏や堤幸彦氏らの作品常連の人気者の上、ツイッターのフォロワー数も102万人を誇る。つい先日も「佐藤二朗がイケメンなら世の6割がイケメン」というSNSの失礼な投稿に本人が「失礼にも程がある、どなたかに言いたい。6割ではない、9割だ!」と反論。直後に「二朗さんはカッコイイ」「私は好きです」「二朗さんはハート、面白さがイケメンです」などのファンのコメントが殺到して話題に。まさに今が旬の俳優は大きな覚悟のもと挑んだ初MC番組でも着実に評価を上げている。
「ゲストでいらっしゃった柴田理恵さんに休憩中に『最高! 素人、丸出しで』って言われて。『あなた、ダメよ! (司会として)うまくなっちゃ』って言われたんです。『大丈夫です。その心配はいりません』って、お答えしましたけど。柴田さんはめっちゃ、ほめてくれているんだけど。もちろん、それはまさに制作側も狙っていることなんだろうけど。僕はプロの司会者、プロの芸人さんになれるはずもないと思っているんで。だから、柴田さんにも『うまくなる心配はないんで、大丈夫です』とお答えしましたけど、あのお言葉はありがたかったです。そういう風になっているといいなと思っていたんで。そういう風以外になりようがないんですけどね。それが新鮮で面白いと言っていただいたので。ディレクターの狙いどおりじゃないですかね」。
5時間に及んだ収録直後のインタビュー。「クイズ・コロシアム」の主宰者らしいど派手な衣装を脱いだ人気俳優は「スタッフと出る人間で誠実にちゃんと番組をつくるという意味では、ドラマも映画もバラエティーもクイズも一緒だと思うんで。そこに区別はないと思ってやっております」と、サービス精神満点の笑顔で言った。
◆佐藤二朗(さとう・じろう) 1969年5月7日 愛知・春日井市生まれ。49歳。4歳から愛知郡東郷町で育つ。信州大経済学部卒業後、リクルートに入社も1日で退職して帰郷。広告代理店に務めつつ、96年、演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げ。全公演で作、出演を担当するなど、俳優活動を開始。劇団「自転車キンクリート」に入団し、広告代理店を退職。08年、「拝啓トリュフォー様」で地上波ドラマ初主演後、多数のドラマ、映画に出演する人気俳優に。「ケータイ刑事銭形シリーズ」「恋する日曜日」「家族八景」などのドラマ脚本を執筆。映画「memo」(08年)では脚本・監督も務めた。身長181センチ。
※4日午前10時に「佐藤二朗、5時間収録直後の30分間疲労困憊インタビュー完全版」をアップします。