乙黒拓斗、右足首痛耐え最年少の金 恩師「異次元 平成の怪物」

日本男子初の10代世界王者になった乙黒拓斗(右)を高田裕司氏が祝福した(カメラ・高木 恵)
日本男子初の10代世界王者になった乙黒拓斗(右)を高田裕司氏が祝福した(カメラ・高木 恵)

◆レスリング 世界選手権第3日(22日、ハンガリー・ブダペスト)

 【22日=高木恵】男子フリースタイル65キロ級決勝で初出場の19歳、乙黒拓斗(山梨学院大2年)が今夏のアジア大会覇者のバジュラン(インド)を16―9で下し、1974年大会を制した高田裕司氏の20歳6か月を超える日本男子の史上最年少優勝を果たした。試合中に負傷するアクシデントに耐え、五輪、世界選手権を通じて初の10代金メダリストに。恩師の高田氏は「異次元。平成の怪物」と、20年東京五輪での金メダルを期待した。57キロ級の高橋侑希(24)=ALSOK=、92キロ級の松本篤史(30)=警視庁=が銅メダルを獲得した。

 6分間が永遠の時に思えた。決勝戦の最中に右足首を負傷した乙黒は痛みが増す中、何度も自分に言って聞かせた。「絶対に勝ってやる」。最後まで執念のタックルを繰り出し、アジア王者を振り切った。「『やっとこの大会が終わったな』っていうのが最初にきた」。日本男子初の10代世界王者はマットを降りると歩けないほど、全てを出し切った。

 山梨学院大で指導を受ける高田裕司監督(64)が1974年大会で樹立した20歳6か月の日本男子最年少優勝記録を、44年ぶりに更新。「東京五輪までに早めに世界一になるというのが目標だった。監督の記録を超えたのは申し訳ないけどうれしい」。試合後は、高田氏の首に金メダルをかけ感謝を伝えた。

 76年モントリオール五輪52キロ級金メダルの高田氏が「異次元。久々の怪物。平成の怪物です」と激賞する逸材だ。日本のレスリングは、前に出て相手がバランスを崩したところでタックルに入るのがセオリーとされてきたが、「彼は相手が入ってきた瞬間にカウンターで回り込む。教えてできるものじゃない」。日本協会の西口茂樹強化本部長(53)も「左右どちらからでも取れる。相手は読めない」と、舌を巻く。

 自宅の8畳部屋が、東京五輪金メダル候補の原点だ。父・正也さんは元レスリング選手。4歳の時に今大会70キロ級代表の兄・圭祐(21)と共にレスリングを始めた。自宅のマットが敷かれた部屋で兄と2人、父からみっちり基礎をたたき込まれた。「日課というか使命感でやっていた」。組み合ううちに熱くなり、窓ガラスを割ってしまったことも。当時から負けず嫌いだった。

 山梨学院大入学時「東京五輪で金メダルを取りたい」と、小幡邦彦コーチ(38)に宣言した。誰もが認める努力の天才は、練習後も一人道場に残りシャドーを繰り返す。「今まで通りだと、ここでの世界一で終わってしまう。もっと自分を高めていきたい」。レスリング熱が高いハンガリー。会場を出ると地元ファンのサイン攻めにあった。新チャンピオンは恥じらいながら、ペンを走らせた。

 ◆乙黒 拓斗(おとぐろ・たくと)

 ▽生まれ 1998年12月13日、山梨・笛吹市生まれ。19歳。

 ▽レスリング 4歳から山梨ジュニアクラブで始めた。魅力は「自分の体一つで相手と戦うところ」。

 ▽エリアカ出身 石和南小卒業後、有望選手を寄宿制で育成する日本オリンピック委員会(JOC)のエリートアカデミー入校。

 ▽戦績 東京・帝京高時代に全国高校総体3連覇。15年世界カデット選手権54キロ級優勝。今年6月の全日本選抜選手権65キロ級初優勝。

 ▽乃木坂46 気分転換は乃木坂46のYouTube。「白石麻衣さんの笑顔に癒やされる」。5分映像を見るだけで元気回復。

 ▽別人格 小幡コーチいわく「マットを降りると人が変わるくらいおとなしい」。

 ▽努力家 本人に自覚はない。「さぼると次の日にやらなきゃならないことが増えるからやっている」

 ▽サイズ 173センチ。

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