【二宮寿朗の週刊文蹴】“俊輔流”引き継ぐ天野の駆け引き

 直接FKは駆け引き勝負。中村俊輔の流儀を横浜F・マリノスの後輩がしっかり引き継いでいる。

 10日のルヴァン杯準決勝第1戦、横浜はアウェーで鹿島に先勝した。直接FKから2点をもぎ取った。

 中村と同じレフティーの天野純は後半31分、ゴール正面から壁の間を通す低い弾道の“高速スライダー”で決めている。ここに至るまでにも駆け引きがあった。前半早々、左サイドの直接FKで天野が行くと見せかけて山中亮輔に蹴らせたように、相手を迷わせることから始めている。

 対するGKは実績十分のベテラン曽ケ端準。簡単なことでは駆け引きで上回れない。迎えたゴールの場面。背後に山中を立たせておいて、天野は壁を低く速く通すことで出どころを見えづらくした。空気抵抗の少ない斜め回転のボールでGKの反応を遅らせ、横っ跳びすらさせていない。

 迷わせる、見えづらくする、タイミングを外す。天野の姿に、駆け引きにたける中村がダブって見えた。

 FKについて中村が語ったことがある。

 「自分自身、(FKは)メンタルに拠(よ)るところが大きい。もし外しても惜しければ、GKや相手に脅威を与えられる。そうなるとセットプレーを与えるだけで“何やってんだ”という声が相手に出てくる。逆にそれでこっちとしてはメンタルで優位に立てる」

 試合終盤には山中の“レーザーFK”から味方が押し込んでいる。メンタルで優位に立ったから、このゴールが生まれたという見方もできる。

 天野は4月のホーム鹿島戦でも直接FKを決めている。右サイドやや遠めの位置から中に合わせると見せかけて、体を「く」の字に曲げるキックでニアにボールを蹴り込んだのは見事だった。

 中村の流儀を引き継ぐ彼のさえわたる駆け引きは必見である。

(スポーツライター)

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