桑田真澄氏「まず球数制限」東大アメフト部・森清之HCと高校野球の未来語った〈1〉

「アメフトなら、桑田さんはクオーターバック。すごいボールを投げそうです」と森コーチ。投げ方を教わる桑田氏(カメラ・橋口 真)
「アメフトなら、桑田さんはクオーターバック。すごいボールを投げそうです」と森コーチ。投げ方を教わる桑田氏(カメラ・橋口 真)
桑田真澄さん
桑田真澄さん
東大アメフト部・森清之ヘッドコーチ
東大アメフト部・森清之ヘッドコーチ

 第100回全国高校野球選手権大会が8月5日に開幕する。その記念企画として、PL学園時代に戦後甲子園最多の20勝を挙げた桑田真澄氏(50)=スポーツ報知評論家=と東大アメリカンフットボール部ヘッドコーチの森清之氏(53)の対談を、きょうから3回にわたってお届けする。高校野球の未来、さらには日本のスポーツ界の未来について熱く語り合った両氏。第1回のテーマは「『プレーヤーズ・ファースト』への転換」だ。(取材・構成=星野和明、加藤弘士、久保阿礼)

 連戦や連投、過度の練習による選手のけがや故障は、高校野球が以前から抱える問題点のひとつだ。甲子園では今春のセンバツから、選手の負担軽減を目的とした延長タイブレーク制【注】が導入されたが、より進んだ負担軽減策を求める声もある。スポーツ本来の目的である選手の「健康」を守るため、両氏は「勝利至上主義」から「プレーヤーズ・ファースト」への転換が必要だと主張する。

 桑田「タイブレークが導入されましたが、センバツでは適用されなかった。使わないようなルールはいらないんです。まずやらなきゃいけないのは球数制限。アメリカではメジャーリーグと医師たちがデータに基づいた『ピッチスマート』というガイドラインを作成して、小学生なら何球投げたら何日空けるとかを決めて守っている。高校や大学でも『君は土曜日の2番手、君は日曜日の3番手』と役割を決めて試合をする。日本は今でも連戦連投。なぜ変えないのか不思議です。『スポーツ障害から守る』という理念はあるのに、神棚に置いてあるだけで、相変わらず気合だ、根性だと。やるべきことは分かってるんだから、実践すればいいのに」

 森「投手に関しては、バシッと決めてしまえばいい。プロの人は職業だから別として、若年層には厳しいルールを決める。最初は慣れないかもしれませんが、数年したら、もうそういうものだと思って、その中でどうするか、どんなタイプの投手が何人必要だとか、どのような試合運びをするべきだとか、だんだん洗練されてくる。その中で賢くやったところが勝つようになると思います」

 桑田「球数制限は選手を守るだけじゃなくて、指導者も守るんです。今は制限がないから、代えたいと思っても代えられない。負けた時に『何で代えたんだ』と言われてしまうから。『100球まで』というルールがあれば代えられる。ぜひ導入してほしい」

 森「メディアは熱中症で選手が倒れたら問題視しますが、一方で『暑い中、よく投げきった』とか『猛練習に耐えて栄冠をつかんだ』と、ダブルスタンダードな部分もある。報道されるのは一定レベルの成功者の話ですが、その何倍も、私たちが知らないところでつぶれていった選手もいる」

 桑田「プロは勝利至上主義でいいけど、アマチュアは育成主義だというのを明確にすべき。プロなら30歳くらいで選手としてのピークが来る。プロを目指すなら、そこへ向けて徐々に上がっていけばいいわけで、中学・高校で無理して頑張る必要はない。学生時代に、一生をかけてやる試合なんかないんです」

 森「誤った勝利至上主義はダメだと選手には伝えています。スポーツでは東大ブランドは関係ない。その中で勝ちにこだわってみようと。勝つためにはどうしたらいいか、色々と考えてみる。そうやって学んでいくことは、勝つことよりも大事。勝ちにこだわるからこそ、見えてくることがたくさんあります」

 桑田「東大野球部で2年間(13~14年)指導したんですが、彼らは『実力がないから他大学の3倍練習しなきゃいけない』と。それじゃ体が壊れる。練習、栄養、休養のバランスが大切なんです。日本の中学・高校生は練習のやりすぎで痩せすぎてますよね」

 森「練習ばかりだと、いくら食べても足りません」

 桑田「東大のアメフト部はどんなスケジュールで活動しているんですか?」

 森「暑い時期は3勤1休です。コンタクトのない、強度の低い練習に限る日もあります。昨年からコーチになって、トレーナーとデータを取っていますが、東大生にとっての適量がまだ見えていない部分もありますね」

 桑田「僕たちの時代は毎日練習で、いかにサボるかということになっていた。どうやって本数をごまかすかとか。それは本来のスポーツのあり方ではないですよ」

 選手の心身に過剰な負担がかかる背景には、高校野球や日本の学生スポーツ界全体にはびこる古い体質がある。その古い体質が浮き彫りになったのが、日大アメフト部による「反則タックル問題」だ。次回は、そうした“負の遺産”からの脱却について両氏が語り合う。(つづく)

 【注】タイブレークとは、試合の早期決着を目指し、延長戦で人為的に走者を置く特別ルール。高校野球では明治神宮大会や国体などで先に導入され、今春から甲子園、全ての地区、都道府県大会でも適用が決まった。延長13回以降の攻撃を無死一、二塁の継続打順で開始し、決着するまで行う。

 ◆桑田 真澄(くわた・ますみ)1968年4月1日、大阪府生まれ。50歳。PL学園では甲子園に全5季出場し、1年夏と3年夏に優勝。85年ドラフト1位で巨人に入団。21年間で通算173勝141敗14セーブ。2007年は米パイレーツ。08年3月末に現役引退。10年に早大大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。16年に東大大学院総合文化研究科修了。現在も同科特認研究員を務める。

 ◆森 清之(もり・きよゆき)1964年10月30日、名古屋市生まれ。53歳。京大アメフト部では85、86年度にライスボウル連覇。卒業後は京大守備コーディネーター、NFLヨーロッパなどのコーチを歴任。2001年から鹿島ディアーズ(現リクシル・ディアーズ)のヘッドコーチ。11年、15年には世界選手権で代表を率いた。17年から東大ヘッドコーチ。

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