【#平成】〈3〉100歳の双子のおばあちゃん「きんさんぎんさん」がブレーク

きんさん(右)とぎんさんが出演した「ダスキン」のCM(同社提供)
きんさん(右)とぎんさんが出演した「ダスキン」のCM(同社提供)
ぎんさんの三女・千多代さん(左)と五女・美根代さん。おしゃべりも健康法の一つだ
ぎんさんの三女・千多代さん(左)と五女・美根代さん。おしゃべりも健康法の一つだ
きんさんぎんさん系図
きんさんぎんさん系図

 天皇陛下の生前退位により来年4月30日で30年の歴史を終え、残り1年となった「平成」。スポーツ報知では、平成の30年間を1年ごとにピックアップし、当時を振り返る連載「♯(ハッシュタグ)平成」を掲載する。第3回は平成3年(1991年)。

 平成3年(1991年)に突然テレビに登場して、人気者となった、100歳の双子のおばあちゃん「きんさんぎんさん」。少子高齢化が社会問題化し始めた時代に、タレント並みの活躍を見せた成田きんさん、蟹江ぎんさんの姿は、誰もが避けられない「老い」を前向きに捉え直す社会現象にまでなった。テレビ登場から27年たった今、ぎんさんの娘たちが100歳前後に到達している。名古屋市で暮らす三女・千多代さん(99)と五女・美根代さん(94)に、秘話を聞いた。(甲斐 毅彦)

 名古屋市南区にある、ぎんさんの自宅を訪ねた。近くを流れる天白川も、よく手入れされた庭の植木も、ぎんさんが元気だった頃のままだ。玄関を開けると、千多代さんと美根代さんがニコニコしながら座っていた。2人は10月で100歳と95歳の誕生日を迎える。

 千多代さんは「とうとう100まで生きたかい。親の死んだ年に近づいて来るし。憂うつになるな。そら、死が近づくで嫌だがぁ」と笑った。

 空前のきんさんぎんさんブームの発火点は1991年9月13日、当時の愛知県知事と名古屋市長が敬老の日を前に数え年で100歳になった2人を表敬訪問。それが地元紙に報じられ、「女性セブン」で2人の連載が始まり、「ダスキン」や「通販生活」がCMで起用。座布団に座った2人は元気に「きんは100歳、100歳!」「ぎんも100歳、100歳!」。年齢を感じさせない滑舌の良さだった。

 2人は一気に全国的な人気者になり、年が明けるとイベント、テレビ、CMと引っ張りだこになった。92年には「きんさん・ぎんさん」が流行語大賞となった。日本の高齢化社会のシンボル的存在になった。

 千多代さんと美根代さんは、母たちが一世を風靡(ふうび)した日々のことを昨日のことのように覚えている。100歳のアイドル2人には芸能界からの依頼が毎日のように殺到した。

 当時68歳だった美根代さんは「そらもう大変だったがね。4姉妹で代わる代わる付き添いをやって。あの頃は今みたいなバリアフリーなんてにゃあから。東京駅に来た時はさ、荷物はいっぱいあるわ、お母さんが乗った車椅子を押すのが大変だったね。4人の中じゃ私が一番若いんだけど」と振り返る。

 当時は「100歳を超える高齢者を引っ張り回すのはいかがなものか」という否定的な声もあった。しかし、人気者になってからのメディア出演は本人たちの意志だった。美根代さんが振り返る。

メディア出演は本人たちの意志 「うちの母は(熱田神宮に)お参りするのが日課だったから足も丈夫だった。きんさんはあまりうちから出歩かない人だったけど、テレビに出始めてからは『妹にゃあ負けられんが』と努力して歩き始めたの。100歳になっても努力できる。感心だよ。だから年寄りも閉じこめておかないである程度自由にさせにゃ。事故起こして若い人に迷惑かけちゃあダメだけどね」

 何歳になっても自由に、明るく、前向きに生きること。戦前から厳しい生活を経てきた母たちの姿を見て学んだのは、「楽しく生きる」ことだった。

 美根代さんには、97歳になる2020年にかなえたい夢がある。

 「東京オリンピックで聖火を持って走りてぇって。5メートルでいいから」。いつまでも、ひ孫2人(小学生)の成長を見守りたいという千多代さんが「ばあさんが持ちたいと言ったら持たしてくれるかもしれんな。申し出ないかんぞ」と2人で大笑い。きんさんとぎんさんがつくった理想の姿は、しっかりと受け継がれていた。

動脈きれい「20歳若い」 2001年に108歳で亡くなったぎんさんの遺体は「長寿研究に生かしたい」という主治医からの要望に家族が同意して病理解剖された。解剖の結果、動脈が若い状態だったことが分かった。解剖を担当した当時の医師は「20歳は若い状態だった」と証言している。

 動脈がきれいな状態だったため、脳も健康の状態が保たれ、認知症につながる変化は少なかったという。ぎんさんの娘たちが長寿であるように、寿命には遺伝的な要素も大きいと言われるが、食事や運動などの生活習慣や医療技術・制度の高さの影響もある。

 きんさんぎんさんが、脚光を浴びていた1991年当時の日本人の平均寿命は女性が82.11歳、男性は76.11歳だったが、厚労省が発表している最新データである2016年現在で、女性は87.14歳、男性は80.98歳。25年間でそれぞれ約5歳伸びている。

 ギネスブック上の世界最高齢記録はフランスの女性、ジャンヌ・カルマンさんで1997年8月4日に122歳で亡くなった。存命の世界最高齢は神奈川県在住の都千代さんで117歳。

 ◆成田きん・蟹江ぎん 1892年(明治25年)8月1日、愛知県鳴海村(現在の名古屋市緑区)で、農業を営む矢野熊吉さんとゆかさんの間の双子の姉妹として生まれる。きんさんは1910年に、ぎんさんは13年に結婚。93年4月、老人性白内障手術のため、2人そろって初めて入院。退院後の5月、天皇皇后両陛下主催の園遊会に招かれる。きんさんは2000年1月23日、心不全により107歳で死去。ぎんさんは01年2月28日、老衰により108歳で死去。

きんさん(右)とぎんさんが出演した「ダスキン」のCM(同社提供)
ぎんさんの三女・千多代さん(左)と五女・美根代さん。おしゃべりも健康法の一つだ
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