【王手報知特別版】スポーツ報知将棋観戦記者座談会1「いちばん強い里見香奈女流名人が最も努力している」

スポーツ報知主催棋戦女流名人戦の観戦記を担当している(左から)内田晶記者、松本哲平記者、大川慎太郎記者、相崎修司記者(将棋会館で)
スポーツ報知主催棋戦女流名人戦の観戦記を担当している(左から)内田晶記者、松本哲平記者、大川慎太郎記者、相崎修司記者(将棋会館で)

 空前のブームが吹き荒れ、列島を揺るがした2017年度の将棋界も、16日の将棋大賞授賞式で棋士たちに各賞が贈られ、一区切りを迎えた。18年度を占う前に、もう一度考えたい。17年度とはどんな1年だったのか―。スポーツ報知が主催する岡田美術館杯女流名人戦を始め、各紙誌でそれぞれ健筆を振るう観戦記者の内田晶記者、大川慎太郎記者、相崎修司記者、松本哲平記者が座談会を開催。対局室で戦う棋士たちの目の前で歴史的瞬間を目撃した記者たちの視点とは―。(司会・北野新太)

 ―まずは本紙主催の女流名人戦から伺います。伊藤沙恵女流二段が女流名人リーグを9戦全勝で突破して里見香奈女流名人に初めて挑戦しましたが、5番勝負は里見さんの3戦全勝で9連覇という結果になりました。今期は女流6棋戦中4棋戦が「伊藤挑戦、里見防衛」の構図でした。

 相崎「年間を通した結果が現在の女流棋界の力関係を現していると言わざるを得ません。私は里見さんが伊藤さんを相手にフルセットの末に防衛した5~6月の女流王位戦5番勝負の最終局も観戦させていただいたんですけど、伊藤さんは『負けた将棋は実力で、勝てた将棋は里見さんにたまたまミスがあっただけです』と仰っていました。互角以上に戦うには、まだまだ何かが足りないということを感じておられたのかも知れません。事実、女流王位戦以降の女流王将戦、倉敷藤花戦、女流名人戦は全てストレートで里見さんが防衛している。やはり、奨励会三段リーグで鍛え上げてきた実力というのは大きいな、というのが正直な印象です」

 内田「女流王位戦で伊藤さんにフルセットまで追い込まれたことで、里見さんが気合を入れ直したという印象もありますね。私が観戦を担当した女流名人戦5番勝負第2局は、師匠の森けい二九段譲りの▲7六銀型に構えました。昔ながらの戦い方なので伊藤さんは意表を突かれたようで、振り返ってみると研究段階で里見さんがかなり優位に立っていたのかもしれません」

 松本「伊藤さんは倉敷藤花戦の記者会見でも『里見さんには技術面でも精神面でも劣っている』と仰っていました。伊藤さんの受け将棋はどこかで一手間違えると、すぐに敗勢につながってしまうような作りに映ることもあります。例えば女流名人戦の第1局はとても良い将棋でしたけど、里見さんが正確に指し続けた一方、伊藤さんは一手間違えてしまった。結果、敗れてしまいました。粘り強さは伊藤さんの武器ですが、里見さん相手に粘るのは大変なようです」

 ―男性棋戦含め、将棋界全体で「受け」よりも「攻め」を重視する潮流を感じます。

 大川「その傾向は以前よりもさらに拡大している気がします。ガチャ攻めの時代ですよね。とにかくちょっかいを出して相手陣の形を乱してから攻める、といった将棋が確実に多くなっています」

 松本「戦いを起こすのがどんどん早くなっていますよね」

 内田「(受けの棋風の代表的な棋士で『千駄ヶ谷の受け師』の異名がある)木村一基九段に少し前に伺ったのですが、全体的に攻めの技術が向上したために受け切れることが少なくなって、攻めなくては戦えなくなっている部分があると」

 大川「あと、ひとつ疑問に思うのは、里見さんが対女流棋士用の研究をしているかどうかということです。これまで三段リーグに在籍して(3月に年齢制限のため退会)、四段になることだけを考えて来られたでしょうから、おそらく対女流の対策というのは本格的にはしていないはずです。でも、それでも女流名人リーグを全勝突破した伊藤さんが番勝負では全敗してしまう、というのは力の差が歴然としていることを証明している。昔、谷川浩司九段が羽生善治竜王にタイトル戦で立て続けに挑戦しながら、連続して負けてしまう時期があった時、挑戦者になってもどこか心の中に重さを感じてしまっていた、という話をされていました。そのような思いに近いんでしょうか…。もちろん女流棋士のみなさんも一生懸命に努力をし、研究をしていると思うんですけど、あれだけの差を見せつけられると、どんな心境で日々の勉強に取り組んでいるだろうか、ということについてはやはり考えてしまいますね」

 内田「正直、いちばん強い人がいちばん努力しているのではないだろうか、と思ってしまう部分もあります。取材で関西将棋会館に行くと、里見さんは朝早くから棋譜並べをするなどして将棋に取り組んでいる。まるで修行僧のようで、他の女流棋士とは全く異なる世界で戦っているようにも映ります」

 相崎「さらに言うと、現状の女流棋界のトップを見ると、里見さん、伊藤さん、あとは加藤桃子女王、西山朋佳奨励会三段の4強という構図があります。いずれも近年の奨励会経験者という共通項があります。やはり奨励会で鍛えられている影響は計り知れなく大きいです」

 内田「そんな中でも、今期の女流名人リーグに山根ことみ女流初段、相川春香女流初段、武富礼衣女流初段が初めて参戦することは、女流棋界にとって明るいニュースですよね。どのくらいやってくれるか、すごく楽しみです」

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