渡部暁斗、骨折抱え2大会連続銀「骨の1本、2本くらいくれてやる」

 ノルディック複合男子個人ノーマルヒル(NH)で2大会連続銀メダルを獲得した渡部暁斗(29)=北野建設=ら日本代表が24日、帰国した。渡部は今大会前に左肋骨(ろっこつ)を折っていたことについて初めて語ったが、「骨の1本、2本くらいくれてやる」という覚悟だったといい、金メダルを逃した言い訳にはしなかった。1994~95年の荻原健司氏以来、日本勢23季ぶりとなるW杯総合優勝に向け、休む間もなく次戦のW杯ラハティ大会(3月3、4日・フィンランド)に出発する。

 不屈の魂で夢を追い続けた男は、胸を張って帰国した。銀メダルを首から下げた渡部暁が姿を現すと、羽田空港で出迎えた約200人からは「お疲れ様!」など、ねぎらいの声と拍手、無数のフラッシュが飛んだ。「目標とした結果を達成できなかったのですごく悔しいですけど、メダルを下げて帰ってきて、皆さんに喜んでいただけたのはうれしい」とすがすがしい笑顔で、お辞儀をしながら歩を進めた。

 全日本スキー連盟は22日に、今月2日の白馬大会の練習で転倒し、左肋骨を骨折していたことを公表。この日集まった約50人の報道陣の前で、本人は「言うつもりはなかった」と苦笑いしながら、初めて経緯を説明した。白馬大会後、「痛みが増して」病院でMRI検査も異常は見つからない。「ストックワークにかなり影響があった」といい、平昌五輪入り後、数日は痛みでクロスカントリー練習はできず。選手村で超音波検査すると、「第6肋軟骨に亀裂が入っていた」。周囲が心配する中、弱音は一切吐かず今大会3種目に出続けた。

 競技中は痛み止めを服用し、宿舎では超音波治療を連日続けた。昨年11月にも、フィンランドでのW杯で肋軟骨を骨折。全治1か月の診断を受けたが、「その後のレースでも勝っているし、白馬も優勝した。けがは言い訳にならない。とにかく自分にできることを、と。ウォームアップに倍くらいの時間をかけた。骨の1本、2本くらいはくれてやるという気持ちでしたね」と冷静に運命を受け入れ、悲願達成へ懸命に準備を整えた。

 NHは金メダルに及ばず、個人ラージヒルは前半飛躍で首位も5位。団体も4位。それでも、世界の頂点に挑み続けてきた29歳は潔い。骨折していなければ金を取れたかという質問に、「そうは思いません。とにかく最大限の努力をしてその結果だったので」と即答した。

 4度目の五輪を終え、もう視線は先を見据える。W杯通算14勝で、5勝の今季は個人総合争い首位だ。残り8戦で、1994~95年シーズンまで3連覇した荻原健司氏以来の総合Vの偉業に挑む。「五輪以上に全てをささげていきたい」。“粉骨砕身”のサムライの世界一への夢は続く。(榎本 友一)

 ◆暁斗に聞く
 ―五輪とは?
 「4年に1回しか来ないチャンスの少なさと、結果を残すことの難しさを今回、過去の3大会よりも感じましたね」
 ―骨折を隠した理由は?
 「あまり(地元の)白馬大会に関してネガティブなことが伝わるのが嫌だった。見に来てくれた人がたくさんいたのもうれしかったので。僕の報道を見て、若い子には無理して試合に出るまねはして欲しくない」
 ―どんな痛みがあった?
 「起きたり、寝返りを打ったり、大笑いしたりすると痛んだ。ジャンプのテイクオフで飛び上がる時に少し響く感じでしたね」
 ―4年後の金メダルへ。
 「今までの自分と違った自分にならないと、メダルは取れても金にはならない。それを考えていく」

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