昨年大みそかに放送された「第68回NHK紅白歌合戦」(後7時15分~11時45分)の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)が前半(第1部)が35・8%、午後9時からの後半(第2部)が39・4%だった。
2部制となった1989年以降、50%超えを何度もたたき出していた第2部では、15年の39・2%、04年の39・3%に次ぐワースト3位だった。
今年9月6日に引退する安室奈美恵のラスト紅白など話題性は十分で、2000年以降は初となる大台の「50%超え」を期待する声もあったが、結果はふるわず…。演歌歌手が年々減少したことでの年配視聴者離れ、安室らNHKホール以外から中継出演した歌手は4組と多く、会場での“生感”を期待するファンとの距離が生じたこと、民放の他番組の健闘など理由を挙げればキリがない。
そんな中、刻々と迫る締め切りに追われるプレスルームの新聞記者たちに衝撃を与えた出場歌手が2組いた。X JAPANと欅坂46だ。報道陣にとってみれば、29日からリハーサル取材を重ねているだけに本番で驚かされることはほぼないが、2組の“ハプニング”にはどよめきが起こった。
まずはX JAPAN。YOSHIKIが昨年5月の首の手術以来、封印していたドラムプレーを解禁した。「ENDLESS RAIN」でピアノ演奏後、Toshlが「紅だぁ~!」とシャウトすると、パソコンを打つ記者たちは大爆笑。本番前日に「体調は30%。(首に激しい負担がかかる)『紅』はマズい」と「紅」以外でのドラムプレーをほのめかしていたYOSHIKIに見事にだまされた。
出番前、総合司会のウッチャンナンチャン・内村光良(53)とのトークもキレキレ。内村「Toshlさんの歌声は宇宙人なのかと」、Toshl「いろんな星に行ってました」、YOSHIKI「洗脳星?(に行ってた)」とToshlの洗脳騒動をネタにボケてからステージへ。ドラムで圧巻のスティックさばきを見せつけ、最後は笑顔でピースサイン。まだ10組以上の歌手が残っている時間帯だったが、Toshlが「よいお年を~」と叫ぶ“オチ”まで忘れなかった。
そして欅坂46。内村とコラボした「不協和音」のパフォーマンスのラストで、鈴本美愉(20)が後ろに卒倒。センターの平手友梨奈(16)、志田愛佳(19)ら3人が軽い過呼吸のような状態になり、メンバーに抱えられながら退場した。
ステージから楽屋に続く通路にいた記者から「5人が倒れた」「救急車が駆けつけた」など、情報が錯綜(さくそう)した。一触即発の事態に陥ったが、3人は会場に待機していた看護師の診察を受け、楽屋で静養して体調を回復した。
今回、ステージ前方下にカメラ設置用に空いた“穴”に出演者が落ちないか心配する声はあったが、まさかの全力パフォーマンスによるダウンにはヒヤヒヤさせられた。
全体を通して見ると、安定した司会ぶり見せながらNHKコント番組「LIFE!~人生に捧げるコント~」のキャラを早き替えで演じた内村の存在感は光った。前半は出演者同士のコラボ企画で盛り上がりを図り、空回りした一面もあったが、後半は凝った演出を極力減らし、実力のある歌手に2コーラス以上を歌わせる時間を割いてしっかりと聴かせる演出は評価したい。視聴率はワースト3となったが、個人的には衝撃度・満足度ともにこれまでのベスト3に入ったと言っても過言ではない。(記者コラム)