18年間にわたりゴーストライターに作曲をさせていたことが発覚し、耳が聞こえるのではないかなど疑惑が持ち上がった佐村河内(さむらごうち)守さん(50)の楽譜を販売する音楽出版社「東京ハッスルコピー」が佐村河内さんに対して損害賠償の訴訟を起こすことを検討していることが7日、分かった。同社担当者は2日午後、携帯電話に本人から週刊文春の告発記事の取材内容についての文面がコピーされた謝罪文が送られてきたことを明かした。
「東京ハッスルコピー」と佐村河内さんの付き合いは、代表曲「交響曲第1番 HIROSHIMA」の楽譜を昨年6月にレンタル用として出版してから。6日に本人が作曲していなかった事実が判明し、11日に発売予定だったソチ五輪フィギュアスケート男子代表・高橋大輔(27)がショートプログラムで使用する「ヴァイオリンのためのソナチネ」など2作と3月11日に発売予定だった「ピアノのためのレクイエム」の出版中止を急きょ、決定した。
「―HIROSHIMA」もレンタル中止となり、全4作品で同社の被害は数百万円に上る。本人と2度会ったという取締役は「会社の信用にかかわりますから、大きな被害です」と憤り、今後は「訴訟を含めて対応を慎重に検討したい」とした。
同社への佐村河内さんの謝罪は、異例のコピペ謝罪だった。2日夕、取締役の携帯電話に送られたメールには週刊文春の取材内容についての文書が長々とコピーされていた。最後に「ここに書かれている内容は、うそ偽りのない真実です」と記され、申し訳程度に謝罪の言葉が添えられていた。取締役は「あ然としました」と振り返った。すぐに「メロディーだけでも作ってないんですか?」と送ると、それも否定するメールが返ってきた。
「―HIROSHIMA」の楽譜は、プロには3か月30万円でレンタルされ、売り上げの40%が佐村河内さんに支払われていた。この取締役は、佐村河内さんとは過去2回、手話通訳を介して会話。不審な様子には気づかなかったという。夫人にも会ったそうで「50歳前後の細身で上品な女性。献身的に夫を支えている印象でした」と明かした。