作曲家・佐村河内(さむらごうち)守さん(50)のゴーストライターだったことを告白した、桐朋学園大非常勤講師の新垣(にいがき)隆さん(43)が6日、都内で会見し「私は共犯者。申し訳ありませんでした」と謝罪した。佐村河内さんの作品として代作したのは18年で20作品以上と説明。両耳が聞こえないという佐村河内さんだが、新垣さんは「聞こえないと感じたことは一度もない」と明かした。これに対し、佐村河内さんの代理人弁護士は、障害者手帳を確認しており「耳が聞こえないのは本当だと思う」と反論した。
新垣さんは会見の冒頭、「佐村河内さんが世間を欺いて曲を発表していることを知りながら、曲を書き続けた私は共犯者です」とざんげ。「彼の言葉を信じて曲を聴いてくださった多くの方々、見事な演奏をしてくださった演奏家の皆様、本当に申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げた。会見には約170人の報道陣が集まり、カメラのフラッシュが一斉に光った。
新垣さんによると、2人の付き合いは約18年前、知人の紹介で会ったのが始まり。当時、映画音楽を手がけることになっていた佐村河内さんが、新垣さんにオーケストラのための曲作りを依頼。「当初は軽い気持ちで始めた」が、以降も佐村河内さんが曲の構想を話し、新垣さんが譜面にして報酬をもらう関係が続いた。
新垣さんは2人の曲作りの過程で、驚きの事実を明かした。新垣さんが曲を録音して聴かせると、聞こえないはずの佐村河内さんが曲について注文。音程の高低などについて指示することが何度もあったという。新垣さんは「初めて会った時から今まで、耳が聞こえないと感じたことは一度もありません」と断言。「佐村河内さんが聞こえないことを装っていたのか」と聞かれ「はい」と答えた。
佐村河内さんが全ろうを自称し始めたのはゲーム「鬼武者」の音楽を手がけた約15年前。全ろうを装った方が曲が売れるという意図があったか聞かれると、新垣さんは佐村河内さんから「これからはこういう(耳が聞こえない)形でいこう」と持ちかけられた。当初は新垣さんの前でも聞こえない“演技”をしていたが、徐々にしなくなったという。
また、自身もその状況に加担し、長年ゴーストライターとして活動するうちに「自分の書いた曲が演奏されて、聴いてもらえる喜びがあった」と現状に甘んじていたことも認めた。音楽を裏切る罪悪感から、何度か代作をやめるよう提案しても「曲を書かないと私は自殺する」と言われたという。
また、作曲家の佐村河内さんが「譜面が書けなかった」とも語った。テレビ番組で放送された佐村河内さん直筆の楽譜も、新垣さんが書いたものから1枚を選んで書き写したものだったという。
これまでの報酬額は「20曲以上作り、700万円前後」と新垣さん。「交響曲―」は出荷18万枚を記録したが「印税などはもらっていない」とし、著作権については「最初から話はしなかった。著作権はいりません」と話した。