海外競馬

【香港ヴァーズ・ステップレース分析】海外競馬通・成田幸穂が前哨戦の米G1ブリーダーズカップターフを分析

 香港国際競走が12月9日に香港のシャティン競馬場で行われる。小欄ではG1香港ヴァーズ(芝2400メートル)に向けたステップレースとして、11月3日の米G1ブリーダーズカップ(BC)ターフを取り上げたい。今年は南部ケンタッキー州のチャーチルダウンズ競馬場(芝2400メートル)で開催された。

 昨年の香港ヴァーズを制したハイランドリールと2着タリスマニックは、ともにBCターフからの転戦だった。ここ5年を振り返っても、BCターフ組は延べ5頭が出走して2勝、2着3回。連対率は100パーセントと、香港ヴァーズでの好走期待度は極めて高い。

 13頭立てとなった今年は、エネイブル(牝4歳、英・ゴスデン厩舎)が断然人気に応えて優勝した。道中は中団7番手あたりを追走し、最終コーナーで大外を回って進出。最後の直線ではアイルランドのマジカルとの一騎打ちとなり、激しい追い比べの末、ゴール前で3/4馬身差をつけて快勝した。勝ち時計は2分32秒65。なお、史上初となる仏G1凱旋門賞とBCターフの同一年制覇を達成したエネイブルは、来年も現役を続ける。

 G1英チャンピオンズフィリーズ&メアズSの覇者マジカル(牝3歳、愛・オブライエン厩舎)が2着。それから9馬身離れた3着に、地元のサドラーズジョイ(牡5歳、米・アルバートラニ厩舎)が入った。

 香港ヴァーズに出走予定のヴァルトガイスト(牡4歳、仏・ファーブル厩舎)は5着。後方追走から最終コーナー手前でポジションを上げていったが、直線では伸び切れず、勝ったエネイブルから2秒以上(13馬身1/4差)遅れてゴールを迎えた。

 案外な結果に終わったヴァルトガイストだが、敗因は馬場とペースにありそう。BCターフ当日の馬場状態は「Good」で、日本の基準では稍重に相当する。しかし、降雨の影響を受けた馬場はかなり軟らかく、パワーも要する状態に見えた。ヴァルトガイストは道悪実績があるとはいえ、本質的には良馬場で末脚を生かした方が良いタイプ。2分28秒70の好時計で勝った今年9月の仏G2フォワ賞(芝2400メートル)のように、速い時計の出やすい馬場が合うようだ。

 また、今回のBCターフでは、地元のグロリアスエンパイアが軽快に飛ばして逃げたこともあって、道中のペースが緩まなかった。息を入れて末脚を温存したかったヴァルトガイストにとっては、厳しい展開だったといえる。その点、例年ペースが落ち着きやすい香港ヴァーズなら、追走も楽になるだろう。今シーズンのシャティンの芝は、1600メートルや2000メートルでコースレコードが出るほど高速化しており、ヴァルトガイストが巻き返す条件は整っている。

 ヴァルトガイストは今年、仏G1サンクルー大賞を含めて芝2400メートルの重賞に4勝。凱旋門賞(4着)では、日本のファンに2番人気に支持された実力馬でもある。管理するアンドレ・ファーブル調教師は、1999年のボルジアと2014年のフリントシャーで香港ヴァーズを制した実績を持つ。もちろん、ヴァルトガイストのシャティン適性を見抜いた上での遠征だろうし、本番では軽視できない一頭となる。

 ◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、南関東版・競馬ブックと研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。ラジオNIKKEIの「香港国際競走実況中継」に出演予定。



最新一覧