筒井康隆さん、最新短編集「ジャックポット」で昨年死去の愛息との“再会”描く「伸輔は皆から好かれていました」…単独インタビュー<1>
今年で作家デビュー61年目を迎えた筒井康隆さん(86)の最新作「ジャックポット」(新潮社刊)が17日、刊行された。収録された14本の短編は、言葉の洪水が続く超実験小説「漸然山脈」や自身が20歳だった時からの時代をノスタルジックに振り返る「一九五五年二十歳」など話題作がずらり。中でも出版前から大きな話題となっていたのが、昨年2月に食道がんのため急逝した長男で画家の筒井伸輔さん(享年51)への思いをつづった私小説的作品「川のほとり」。日本文学界の巨星が熱狂的ファン「ツツイスト」待望の新刊に込めた思いを聞いた。(構成・中村 健吾)
作家・筒井康隆にとって、大きな意味を持つ作品が今回の短編集の最後に収録されている。
先月発売の文芸誌「新潮」2月号に掲載されたとたん、あらゆる文学関係者が泣いたと大評判になった作品「川のほとり」。筒井さんが昨年2月に51歳の若さでなくなった一人息子で画家の伸輔さんのことを描いたどこか私小説的作品だ。
物語は夢の中の「川のほとり」。そこで主人公の小説家「おれ」は亡くなって間もない息子「伸輔」と再会する。「おれ」はこの再会が自分の夢であることを知ってはいるものの、息子と静かに語り続ける。話が終わったら、その瞬間、夢が覚めてしまうから―。
「父さん」
「おう」
「母さんは元気」
「元気だよ」
静謐(せいひつ)な筆致に新潮社出版部長の中瀬ゆかりさん(56)も「涙のあとをたくさん原稿用紙に残してしまった」とし、今回の短編集収録を熱望したと言う作品。読んだ者の誰もが涙する「川のほとり」。
筒井さんは、さらに収録作品「一九五五年二十歳」のラストでも「なんとおれは八十五歳になった。二十歳のおれは、やがて作家になり、こんなに長生きするとは思ってもいず、まして息子が五十一歳の若さで死んでしまうなどとは夢にも思っていなかったのである」と、伸輔さんの死についてつづっている。
今回、筒井作品としては非常に珍しい私小説的アプローチに踏み切った思い。また、今回の短編集の装画も伸輔さんの作品が彩っているが、この点への思いを筒井さんが初めて明かした。
「伸輔は皆から好かれていました。特に編集者との交歓の席などで編集者とも親しくしていましたし、画業でも多くの人に知られていました。強(あなが)ち私小説的ではないと思います。今回の装幀も新潮社の方からの是非にも、というお話で実現したもので、新潮社装幀室の方にはただ感謝、感謝です」
あくまで淡々と答えた日本文学界の巨人。話題作はさらにある。
新型コロナ禍の日々をモチーフとした表題作「ジャックポット」。コロナとの闘いが続く激動の2020年という1年と並走しながら書いた理由。作品中、コロナへの恐怖感も率直に記されているが、筒井さんの胸中にコロナ禍の社会への絶望感があるのか。後半部分「ウイズ・コロナ編」をまるで終末SFのように描いた狙いも聞いた。
「小生、正直の話、あまりコロナを恐怖してはおりません。この年の一番の出来事はやはり筒井伸輔の死であり、それに比べたらコロナは『大当りの年』の添え物みたいに思っています。怖がっているように書いたのはあくまで小説だからです」―。
ここでも、その胸の中には亡き伸輔さんへの思いが、ずっしりと横たわっていた。
◆筒井 康隆(つつい・やすたか) 1934年(昭和9年)9月24日、大阪市生まれ。86歳。同志社大文学部卒業後の60年、家族で発行した同人誌「NULL」から短編「お助け」が江戸川乱歩によって「宝石」に転載され、作家デビュー。65年、処女作品集「東海道戦争」を刊行。SF第一世代として「48億の妄想」、「霊長類 南へ」など話題作を書き続ける一方、ジョブナイル「時をかける少女」、実験小説「虚人たち」、「残像に口紅を」など純文学分野でも最重要作家となる。「虚人たち」で泉鏡花文学賞、「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、「ヨッパ谷への降下」で川端康成賞、「朝のガスパール」で日本SF大賞、「わたしのグランパ」で読売文学賞など受賞多数。「ツツイスト」と呼ばれる多くのファンを持つ。「富豪刑事」、「パプリカ」など映像化作品も多数。アンソロジスト、劇作家、ホリプロ所属の俳優としても活躍している。
<2>に続く
最新一覧
-
-
ボート・荒川龍太、米川志保が五輪切符懸かるアジア大陸予選出場権獲得 荒川「力を最大限に発揮できた」
-
【巨人】原監督、井納翔一の好投にうなる「思っていた通りのパワーピッチャー」
-
-
鈴木紗理奈「ギャル化しよーかと思って」がっつりメッシュの新ヘア公開「安室ちゃんやん」
-
【巨人】原監督、戸根千明を絶賛「動物的に投げる人が人間味。エイヤーじゃなかった」
-
-
【報知杯弥生賞・1週前追い切り】タイムトゥヘヴン迫力十分の動きで併入
-
【巨人】梶谷隆幸が「カジサカマル」けん引 原監督「勇人にも丸にも刺激」
-
-
Koki, ミニ&ニーハイソックスで引き締まった美脚「才能溢れる18歳」
-
【巨人】陽岱鋼、決勝点につなげる貴重な一打 今キャンプは石井コーチと特訓
-
【巨人】田中豊樹、1点差の9回を無失点で締める
-
石田靖の立ち位置は「助演男優賞でいい」 気遣いを島田紳助さんに教わる
-
メッセンジャー・あいはら、一時重篤の昨年の肺炎は「加湿器の使い方が原因」と明かす
-
【F東京】主将のMF東慶悟「負けていい試合は一つもない」 27日の開幕戦で浦和と対戦
-
3・4開幕、女子ツアー今年初戦が一日1000人限定の有観客に
-
【横浜M】MF喜田拓也がキャプテン就任「頼もしい仲間と一緒につくっていく」
-
武藤雅騎手が右肩骨折 復帰は早くても3月20日か
-
リバティハイツが引退 18年の報知杯FR優勝
-
【巨人】主力と若手の融合で対外試合2連勝 打線は10安打4得点
-
【楽天】岸孝之が今年初実戦で2回無失点
-
【巨人】高橋優貴、小雨の中で4回7安打3失点
-
橋本聖子会長 東京五輪観客の上限、海外受け入れなど3・25メドに方向性
-
【巨人】戸根千明が1回無失点 ルーキー・秋広優人の失策をカバー
-
白鵬、連日30番で平幕・阿武咲に20勝10敗…合同稽古が終了「来てよかったと思います」
-
東国原英夫氏、7万円接待の山田内閣広報官に「記憶をなくすというのはねぇ、まあ。大変なこと」
-
伊藤惇夫氏、「7万円接待」の山田真貴子広報官をチクリ「今後、この人の発信が国民の信頼を得られるかということ」
-
宮根誠司氏、東京のコロナ感染者340人に「300人台に戻ったというところで感染者の減少の鈍化というのはあります」
-
【DeNA】初出場の宮崎敏郎が初打席初安打! 順調な調整ぶりアピール
-
【甲府】荒木が初の開幕スタメンへ意欲。夫婦二人三脚で山梨盛り上げる
-
【DeNA】開幕投手候補2人がまさかのダブル乱調 大貫晋一と平良拳太郎がアピールできず
-
【DeNA】平良拳太郎が大乱調…予定の3回もたずまさかの8安打6失点
-
21年初戦を迎える畑岡奈紗「今年は最低でも1勝できるように」と抱負
-
【中日】5回8安打3失点の柳裕也「収穫はあったが、ヒット8本は打たれすぎ」
-
【巨人】松原聖弥がレーザービーム 不慣れな左翼守備でもアピール
-
阿武咲、白鵬相手に10勝20敗 充実30番に「ありがたい気持ちと楽しい気持ち。プラスな感情しかなかった」
-
星野調教師にスタッフが厩舎カラーの紫のバラ100本と記念品を贈呈 「悔いのない55年間」
-
藤井隆、家族に人気の手作り料理は「天津飯。目分量で作れる」
-
【報知杯弥生賞・1週前追い切り】タイムトゥヘヴン迫力十分の動きで併入
-
三船美佳、次女が離乳食デビュー「15年ぶりだから、めちゃYouTubeとか検索」
-
スギちゃん、8・2キロ減量のビフォーアフター公開「別人」「ワイルドでカッコイイ」
-
【中日】郡司、根尾、岡林の近未来の主軸候補が3連打 高橋から一時逆転に成功
-
妊娠中の最上もが、32歳誕生日を報告「身も心も強い母を目指して」
-
正代、師匠交代で「『成績に響いた』と言われないように頑張らないと」…前師匠は不適切行動で退職
-
【巨人】坂本勇人、今季初安打は豪快に適時二塁打 梶谷と「カジサカ」連打
-
【Tリーグ】男子ファイナルのベンチ入りメンバー発表 3連覇狙う東京は張本、水谷に13歳松島も
-
【DeNA】開幕投手候補筆頭の大貫晋一が3回6安打2失点と苦戦
-
【巨人】亀井善行が実戦初安打 右翼線へ勝ち越しタイムリー
-
【巨人】炭谷銀仁朗、先制打の後にベンチ前で転倒して一回転 華麗な受け身にナイン爆笑
-
若狭勝氏、愛知リコール署名問題は「プロ的な集団がやったこととは考えにくい」
-
【巨人】井納翔一、3回無失点 移籍後初の対外試合で好投
-
【すみれS】グロリアムンディが栗東・坂路で54秒3 山口助手「大きい舞台へ行ければ」
-
【注目馬動向】カレンモエがオーシャンSの1週前追い切りで坂路50秒3の一番時計