五輪開催可否、ワクチン接種で安心は「夢物語」…東大医科学研究所・石井健教授が警鐘

東大医科学研究所の石井健教授

 東京五輪開催の可否について、感染症学の専門家はどのように見ているのか―。開催への切り札とされるワクチン接種について、東大医科学研究所の石井健教授は、ワクチン神話に傾くことの危険性を強調した。

 大会開催へ向けた準備の考え方を巡っては「ワクチン接種があってこそ五輪も可能だ」(河野太郎行政改革担当相)、「ワクチンを前提としなくても開催できるよう準備を進める」(菅義偉首相)など、政府内でも見解は異なる。

 石井氏(ワクチン科学分野)は、「接種により感染状況が落ち着くなど、ワクチンはゲームチェンジャーにはなり得ると思いますが、ゲームオーバーにはならない」と指摘。「五輪を人質のようにとって早く打たせようとすることは言語道断。ワクチンとは関係なく粛々と開催準備を進めていく方が理にかなっている」と語った。

 政府は現在、1億5700万人分のワクチンを確保し、2月下旬から医療従事者の先行接種を予定している。一方で、接種が開始されている欧米では既に接種計画に大幅な遅れが生じている。石井氏は「ワクチン接種は五輪と同じくらい国を挙げた大きな事業」とし、日本でも流通やワクチン忌避などの課題により遅れが生じる可能性を指摘した。

 英政府は現在、2回目の接種時期を遅らせ、より多くの国民に1回接種を行う計画を打ち出している。石井氏は“広く浅く”戦略について「0回接種よりも1回打った方が感染リスクを下げられるかもしれないが、臨床試験データは2回接種のものしかない。当然リスク管理の問題がついてくる」と否定的な考えを示す。

 また、国内で集団免疫と呼ばれる状態を実現するには「国民8~9割の接種率を達成する必要があり、最低でも2年はかかる」と指摘。「大会までに五輪関係者を含めてワクチンを接種し、安心してマスクを外して開催するというのは夢物語に近い」とした上で、「ソーシャルディスタンスを保つなどの対策や、無観客開催を検討するなどして準備を進めてほしい」と、あくまでワクチンを開催への“最後の砦(とりで)”としない大会運営を期待した。(奥津 友希乃)

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