敏腕カメラマン・福田氏、衝撃の一枚「何か起きそう」ドネア沈めた井上尚弥の左ボディー…「モンスター 聖地襲来」〈1〉

昨年11月のドネア戦の11回、ダウンを奪った井上尚弥の左ボディーブロー(c)Naoki Fukuda

◆プロボクシング WBA&IBF世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 王者・井上尚弥―ジェーソン・モロニー(10月31日=日本時間11月1日、米ネバダ州ラスベガス MGMグランド)

 WBA、IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥のラスベガスデビューまであと2日。日本のエースは本場でどう階段を上っていくのか。スポーツ報知では「モンスター 聖地襲来」と題し、井上の可能性に迫る。連載第1回は、ラスベガスで長く腕を振るったカメラマンの福田直樹氏(55)にインタビュー。ファインダー越しから見えた怪物のすごさとは…。

 一流カメラマンの目も惑わされた。昨年11月7日、世界5階級制覇の経験もあるノニト・ドネア(フィリピン)との大一番。11回、井上が左を強振すると、世界的名手は顔をゆがめ、四つんばいでダウンした。

 判定決着の死闘で勝利を決定づけた一撃。リングサイドでシャッターを切っていた福田氏は「パンチが、かすったかに見えた」と振り返ったが、実際には拳がドネアの右脇腹にめりこむ写真を収めていた。「スピードが落ちずに打ち抜くのは、急所をえぐり取るような感じですかね」と驚嘆した。

 素早い攻防の中、撮影のノウハウはいくつかある。パンチを出す瞬間にわずかに動く肩や、劣勢な相手の強引な動きに選手が繰り出すカウンターを狙う…。だが、これらの方法論は井上には当てはまらないという。

 2014年12月のWBO世界スーパーフライ級王座獲得時から撮り続けてきた福田氏は、被写体としての井上を「やはり難しい」と評する。「動いてからでは遅い。癖やタメがない普通のフォームで強打を打てて、(元ヘビー級王者)タイソンみたいにどこに当てても倒せてしまう」と狙い所が絞りにくいという。それでも編み出した方法は「何かが起きそうな時を撮る」だ。

 ドネア戦のKOパンチを左フックと予想していた。だが「2回に井上選手は左目上を切り、ドネアとの距離が遠くなった。一方で、得意の左ボディーをほぼ出しておらず、終盤にかけて勝負に出るのでは、と思った」。パンチを予見し、衝撃の一枚をものにした。

 福田氏は01年にラスベガスへ移住し、カメラマンとして約15年、本場で世界の超一流選手たちを追い続けた。16年6月の帰国後は「日本のボクシングを海外に伝えたい」と、新たな夢を描き始めた。井上の台頭で、初めて自身の写真が米英2大専門誌の表紙を飾り、今回のモロニー戦のバナー(ウェブ広告)の写真も担当した。

 もうラスベガスは日本人選手にとって遠い場所ではない。今回、現地取材はできないが「井上選手らしい試合を見せれば、きっと向こうの人たちの心をつかめるはず」。福田氏は新たな開拓者の拳を信じている。(飯塚 康博)

 ◆福田 直樹(ふくだ・なおき) 1965年7月15日、東京都生まれ。55歳。幼少時からボクシングを見始める。大学在学中に専門誌でライターとして従事し、2001年に写真家に専念するため、ラスベガスに移住。米国内を回り、年間400試合以上を取材。08年から米専門誌「リングマガジン」の専属カメラマンを8年間務めた。全米ボクシング記者協会の最優秀賞を4度獲得。12年にはWBCの年間最優秀カメラマン賞に選出された。

 ◆香川照之と同期

 福田氏は、芸能界随一のボクシングマニアの俳優・香川照之(54)とは東京・暁星学園の小中高の同期だ。中学1年時に隣の席になり、福田氏がボクシングの魅力を教えたという。2人で同校から近い後楽園ホールに足しげく通いラスベガスでの世界戦観戦や、日本で放送していない中継を見るためにハワイまで行きテレビで見たことも。中継のゲスト解説を務める機会が多い香川を「僕が5分かけて考えることを香川は5秒で思いつき話せる。知識量もすごい」と舌を巻いた。

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