【特別企画】プロ入り初の右方向への一発…坂本勇人2000安打への道 あと13本

09年6月8日の楽天戦で初の右方向へのアーチとなる8号ソロを放った坂本勇人

 巨人の坂本勇人内野手(31)の通算2000安打達成へカウントダウンの日々が続いている。スポーツ報知では「坂本勇人2000安打への道」と題して、これまでの勇人の活躍を当時の記事で振り返る特別企画を実施。歴代の「坂本番」記者が選んだ思い出の記事を全34回で紹介する。9回目は2009、2010年担当・橋本純己記者の「初の右方向へのアーチがファンへ御礼弾」。

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 巨人が今季初の5発で楽天に快勝し、貯金を今季最大の18に増やした。坂本が自身2本目の先頭打者弾で先制すると、その後も亀井の2発など計8点を挙げて4連勝。坂本は「マツダオールスターゲーム2009」ファン投票の第1回中間発表でセ・リーグ遊撃部門トップ。初の右方向へのアーチがファンへの「御礼弾」となった。

 ◆巨人8-3楽天(2009年6月8日・東京ドーム)[勝]高橋尚 10試合4勝1敗[敗]長谷部 9試合3勝5敗〔セーブ〕豊田 26試合1勝1敗1セーブ▼[本]=坂本8号(長谷部・1回)谷2号(長谷部・4回)亀井5号(長谷部・4回)6号2ラン(青山・7回)ラミレス9号(井坂・5回)▼[二]=李承ヨプ、鈴木

 ユニホームの袖をまくりあげると、右腕を折り曲げて力を入れた。ダイヤモンドを勢いよく一周した坂本は、ロッカールームへ戻ると、力こぶを作ってナインに誇示した。「まさかフェンスを越えるとは思わなかったです。パワーがついたんですかね」といたずらっぽい笑みを浮かべた。

 逆方向へ伸びた打球が、さらなる成長を告げていた。初回。長谷部の外角高めの直球をとらえ、押し込んだ。「うまく右方向へ打てましたね」と自画自賛の8号ソロは右中間スタンドへ達した。昨年と合わせた15本は、すべて左越えだった。パワーと技術がかみ合い、プロ入り後初めて右方向へ運んだ、自身2度目の先頭弾。54試合目にして早くも昨季の本塁打数に並んだ。

 願いがかなった。06年9月25日。巨人から高校生ドラフト1位指名された17歳の少年は、あこがれの選手に二岡の名前を挙げた。「逆方向にポーンって打ったらホームランになるすごい選手」と中学時代から打撃フォームを参考にしていた。

 入団会見でも「右方向へ大きいのが打てるようになりたい」と繰り返した。昨オフは飛距離アップを目指し、左ひざを開かない打撃フォームに修正。ウエートトレにも全力を注いだ。3年の時を経て、ついに右方向へアーチを放った。「去年じゃ考えられないこと」と手応えを口にした。

 小学時代から、切磋琢磨(せっさたくま)するライバルにも成長を見せつけた。この日、球宴ファン投票の第1回中間発表が行われ、楽天・田中とともに1位に選ばれた。当時、同じチームでバッテリーを組んだ2人は試合前の練習で談笑。「世間話ですよ。お互いに調子がいいねっていう話をしました」と坂本は照れ笑い。プロの世界ではマー君が先行したが、勇人もすごい勢いで追いついてきた。

 若武者の一撃で勢いに乗り、チームは今季初の5本の本塁打で、交流戦初の4連勝。月曜日にもかかわらず、詰めかけた今季最多タイの4万5835人の前での完勝だった。貯金を今季最多の18とした原監督は「いい所で出てくれた。そこ(右方向)が成長の証しだと思います」と目を細めた。

 それでも坂本は満足しない。打撃3部門で昨季の成績を上回るのはほぼ確実だが「今の時点でそれが目標じゃない。もっともっと上を目指して頑張りたい」。あくなき向上心がある限り、まだまだ想像を超えていく。(橋本純己)

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