菅田将暉&小松菜奈の豊かな表現力、中島みゆきの世界観も…瀬々監督最新作「糸」8月21日公開

(左から)小松菜奈、瀬々敬久監督、菅田将暉。キャリア40年の名匠が若い2人の演技に脱帽した

 映画「64―ロクヨン―」(前編・後編)などで知られる瀬々(ぜぜ)敬久監督(60)がメガホンを執った最新作「糸」が21日に公開される。シンガー・ソングライターの中島みゆき(68)の名曲「糸」に着想を得て、菅田将暉(27)、小松菜奈(24)のダブル主演で映画化。平成の約30年間、東京、北海道、沖縄、シンガポールを舞台に2人の愛を描く感動の物語だ。瀬々監督に主演2人の魅力や映画に込めた思いを聞いた。(有野 博幸)

瀬々監督は菅田と小松の豊かな表現力を絶賛

 「縦の糸はあなた 横の糸は私」。糸を人に見立て、出会いの奇跡と絆の大切さを歌った「糸」は中島が知人の結婚を祝して作り、1992年発売のアルバムに収録された。2004年にMr.Childrenの桜井和寿(50)が率いるbank bandのカバーで注目を集め、その後は結婚式の定番ソングとして絶大な人気を誇る。撮影にあたり瀬々監督は「歌詞からイメージを膨らませていった」。迷った時にも歌詞を頼りに物語を紡ぎ、1本の映画に仕上げた。

菅田と小松演じる2人が函館空港でガラス越しに電話で話すシーン

 中島の曲では初期の「アザミ嬢のララバイ」「悪女」「時代」がお気に入り。「女性の怨念を歌ったような、みゆきさんの歌声はどこか昭和っぽい。平成に入ってからは世界観の広がった歌を歌うようになったけど、『糸』はその両方をミックスさせたような良さがある」。劇中では昭和の雰囲気を感じさせつつ、登場人物の漣(菅田)、葵(小松)は平成らしい生き方を体現していく。

 「漣は地方にとどまりながら世界に認められようと努力する。昭和にはなかったネットの力を頼りに。葵は世界に打って出ようとする平成の女性像」。2人が演じた役柄は決してヒーローではない、日常的な人物。だからこそ「どこにでもいそうな人間をどう演じるのか、いかに自然に見せるかが大切。生まれ持った愛らしさ、人間力、素朴さに期待しました」。

 キャリア40年の名匠が2人の演技に脱帽した。「成田凌さんが熱唱する『ファイト!』を聴いて共感している菅田さんの表情が素晴らしい。あの表情だけで、ご飯を何杯も食べられるようなお芝居だった。小松さんは泣きながらカツ丼をガツガツ食べるシーンが印象的」。さらに2人の共通点として「普通は助走があって上がっていくけど、2人とも一気に感情が爆発する。0から10に急上昇する」と豊かな表現力を絶賛した。

 菅田、小松以外にも榮倉奈々(32)、斎藤工(38)、山本美月(29)、成田凌(26)、二階堂ふみ(25)ら主役級の豪華キャストが勢ぞろい。「4番バッターばかりで勝てない野球チームは『監督が悪い』と言われますからね。そうならないように頑張りました。倍賞美津子さん、永島敏行さん、松重豊さんのようなベテランにも出ていただいて世代も幅広く、大きなうねりが生まれましたね」

 函館空港で漣と葵が別れ際に「もしもしコーナー」という電話で話すシーンは話題を集めそうだ。ガラス越しに会話ができる空港備え付けの電話。「ネットで見つけて、ロケハンの時に確認して脚本に入れてもらいました」。目の前にいながら強化ガラス越しなので受話器を通して声が変わる。「近いのに遠い感覚になる。糸電話のようなイメージですね。この映画がヒットして聖地になればいいな」と期待を寄せる。

 コロナ禍の今こそ届けたい作品だ。「コロナの時代というのは濃厚な付き合い、密接な出会いを避けざるを得ない時代。でも、この映画は歌詞にある『縦と横の糸』のように人と人との出会いと別れを描いた物語。大変な時代ですけど、人間は笑ったり、悲しんだりしながら生きていかないと。だからこそ『糸』という映画が存在する意義があると思う」

 映画監督として「日常では出会えない感情や顔を見てみたい。それによって見る人を感動させたり、驚かすことができる」というのが信条だ。デビューして影響を受けた相米慎二監督(01年死去、享年53)は「人間が普段見せないような感情の爆発を見せてくれた」。5月に60歳の誕生日を迎えたが、「あと10年、思いっきり自由に映画を作っていきたい」。現状に満足することなく先を見据えている。

 ◆「糸」 平成元年に生まれた高橋漣(菅田)と園田葵(小松)は13歳で出会い、初めての恋をする。その後、すれ違い、遠く離れ、それぞれの人生を歩む。そして奇跡の糸をたぐり寄せながら、平成の終わりに運命に引き離された2人が再び…。当初4月24日公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響で8月21日に延期になった。

 ◆瀬々 敬久(ぜぜ・たかひさ)1960年5月24日、大分県生まれ。60歳。京都大学文学部卒。助監督を経て89年にピンク映画の「課外授業 暴行」で監督デビュー。2000年頃から一般作品に取り組み、「感染列島」(09年)、「ヘヴンズストーリー」(10年)、「アントキノイノチ」(11年)、「64―ロクヨン―」(前編・後編、16年)、「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(17年)、「菊とギロチン」(18年)などを手掛けた。

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