【甲子園】加藤学園 初聖地 万感1勝 エース・肥沼竣が完投勝利「野球を続けて良かった」

控え部員や保護者が内野スタンドから見守る中、初めての甲子園で勝利し校歌斉唱で整列する加藤学園ナイン。無観客開催となったため、通常は離れたアルプス席で行われる横断幕の掲示や応援を内野席で実施。今大会ならではの風景となった(カメラ・馬場 秀則)

◆2020年甲子園高校野球交流試合第3日(12日) ▽第2試合 加藤学園3―1鹿児島城西

 加藤学園、勝った―。創部25年目で“初甲子園”となった加藤学園は、鹿児島城西を下して歴史的な1勝を挙げた。エース・肥沼竣(3年)が9安打を浴びながら踏ん張り1失点完投。6回表に勝又友則主将(3年)が両足負傷で交代したが、その裏、大村善将副将(3年)が先制適時打。8回には杉山尊内野手(3年)が右中間にランニング2ランを放った。

 夢に見た光景が、眼前に広がっていた。9回2死一、三塁。加藤学園・肥沼は力を振り絞って135キロの直球を投げ込む。ボテボテの二ゴロを大村が処理し、待ち望んだ瞬間がやってきた。「ここ最近の投球で一番良かった。自分たちの野球を最後まで貫くことができた」。マウンドで全く表情を変えることがない“笑わないエース”が、ついに笑った。

 憧れの舞台は想像以上だった。「聖地と言われる場所。迫力、大きさに緊張した」。押し寄せる重圧と戦いながら、必死に腕を振った。初回先頭を含め4回まで毎回安打を許したが、粘った。最速140キロの直球を軸に緩いカーブ、チェンジアップ、パームなどを巧みに織り交ぜ8回まで無失点。後輩捕手の雨宮が「(ピンチでマウンドに行っても)全然話聞いてくれなかった」と苦笑いするほど、“ゾーン”に入っていた。

 自分と戦ってきた。代替大会は飛龍に1回戦負け(7月12日2―3)。6回、集中打を浴びて逆転を許した。「どこかなめて、油断していた」。数日間は拭いきれない後悔の念が胸を占めた。自分が抑えていれば、勝てたはず。「甲子園がなくなった時とは違う悔しさ」が止めどなく押し寄せた。学校でも、ぼうっとする時間が増えた。

 テレビやネットでは東海大相模・山村崇嘉内野手(3年)ら武蔵府中リトル時代の仲間の代替大会での活躍が伝えられていた。「みんなすごい。自分とはレベルが違う」。自然と心の火がともった。

 チームも必死で前進してきた。打線が奮わなかった飛龍戦の反省を生かし、ベンチ内で相手の配球や絞るべき狙い球を話し合う機会が格段に増えた。シート打撃では機動力を意識。米山学監督(42)が「打者と(投手の)1対1でなく全体で取りに行く」と作戦を明かすように、この日は2盗塁で相手の146キロ右腕・八方を揺さぶった。

 6回、勝又が両足のももとふくらはぎをつって交代したが、その裏、2死二塁から大村が中前に先制打。「チャンスで絶対打つと決めていた」と副将は胸を張った。8回2死二塁では杉山が右中間を深々と破り、快足を飛ばして一気にホームへ。「大村と自分が引っ張らないといけないと思った」。代替大会では共にノーヒットだった3年生コンビが主将離脱の危機を救った。

 治療を終え9回にベンチに戻った勝又は「全員がチームのことを考えてプレーしてくれた」と感謝。指揮官も「今まで色んなことがあったけど、信じていればいい事はある」と感慨に浸った。肥沼や勝又ら大学でのプレーを希望する選手もいるが、ひとまず、高校野球は一区切り。エースは「野球を続けて良かった」としみじみ言った。1時間54分の夢の時間。静岡では歌えなかった校歌は、聖地で凱歌(がいか)となった。(武藤 瑞基)

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