長澤まさみ「最後まで共感できなかったけど、この役に出会えたことに感謝」…主演映画「MOTHER マザー」で難役を熱演

30代に入り、美しさに磨きがかかる長澤まさみ(カメラ・頓所 美代子)

 女優の長澤まさみ(33)が、公開中の主演作「MOTHER マザー」(大森立嗣監督・脚本)でシングルマザー役に挑んだ。実際に起きた少年による祖父母殺害事件に着想を得て映画化。男たちと行きずりの関係を持ち、その場しのぎで生きる女を熱演した。女優デビュー20周年の長澤がインタビューに応じ、今作に懸ける思い、役づくりの苦労などを語った。

 「演じる役はどれも理解できると思っていたけど、正解が分からなかったのは初めて。共感しようと思っても、最後まで共感できませんでした」

 実際に起きた少年による祖父母殺害事件に着想を得て映画化。「新聞記者」の河村光庸プロデューサーが企画・製作を務めた。演じたのは男たちと行きずりの関係を持ち、その場しのぎで生きる自堕落なシングルマザー・秋子。女性としては破滅的だが、母親としては子供をかわいがって育ててきた。実際に息子の膝をなめるシーンもある。

 「ある意味でサイコパス。正常な感覚ではないし、彼女を理解するのは難しい。(普通であれば)人間性がうかがえたりすることで同情の余地を残すけど、そういったものが一切に出ないようにした。許す余地がないほどに演じられれば、この役は成立すると思った」

 しっかりとした母親役は初めて。舞台「紫式部ダイアリー」(14年)の共演以来、仲が良いという事務所の先輩で、3児の母親の斉藤由貴(53)に話を聞いた。

 「由貴さんが(母親の心情を)教えてくれました。なるほどと思ったし、お母さんになっていないと分からない感覚という気がした。理屈として理解できていても、あらためて気づかされた感じ。秋子を捉える良いきっかけになりました」

 息子の周平に異常なほどの執着を見せ、自分の分身として忠実であることを強いる。人格形成では、母親が子供に与える影響は大きい。長澤も自身の経験から感じた部分だ。

 「物事の捉え方、選択の仕方や発する言葉。全てはお母さんがバイブルです。思春期はそれにがんじがらめになる瞬間もあった。その頃悩んだ感覚を、この作品に同じように見た。今思えば、母親のもとに生まれて来られて良かったと心底思うし、お母さんには感謝しかない」

 両親から絶縁され、社会からも孤立していく秋子。秋子から受ける影響が大きすぎるあまり、周平は祖父母に手をかけてしまう。「秋子が言ったことであれば、常識的じゃないことも、周平には当たり前(=常識)になる。母親に対して従順に行動してしまう。子供が親の言うことを聞く―という普遍性を、この物語の怖さとして感じました」

 コロナ禍の影響で、長澤は上演予定だった一人芝居「ガールズ&ボーイズ―Girls&Boys―」(5月、東京・新国立劇場小劇場)が中止になった。「今までで一番のチャレンジ。苦しすぎて、稽古中に『これからは自分に優しく生きたい…』って思ったぐらい。(それが飛ぶなんて)人生って大変」と笑うが、女優業の面白さを再発見する期間にもなった。「本を読んだり、映画を見たり、この仕事の奥深さを感じることができた。大変なことも多いけど、制限なく追求できる魅力的な仕事なんだなって思いましたね」

 デビュー20周年、役柄や作品に後ろ髪引かれる感覚は初めて。それだけ今作と向き合ってきた証しでもある。

 「周囲から『この役をやらせたい』と思われるような女優でいたい、と漠然と考えていた時期があった。自分にとってそういう(期待に応えられた)役になったんじゃないかな。出会えたことに感謝ですね」(加茂 伸太郎)

 ○…長澤は自身のプライベートについて「タイミングですからね、結婚や母親になるということは。子供は嫌いじゃないし、扱いや対応には慣れている方なんです」と笑顔。役柄や作品との向き合い方にも言及。「30代に入って、(作品を)数多くこなすことが一つではないという気がしている。自分が『いい』とするものに、深く、長く時間を掛けられるようなスタンスが生まれるといいなと感じました」と話した。

 ◆長澤 まさみ(ながさわ・まさみ)1987年6月3日、静岡県生まれ。33歳。2000年、第5回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ。03年「ロボコン」で映画初主演。17年「キャバレー」で初ミュージカル。今後は映画「コンフィデンスマンJP プリンセス編」「シン・ウルトラマン」の公開が控える。168センチ。血液型A。

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