選手の気持ち完結 代替大会の開催願う…NHK解説者・杉本真吾さんが語る甲子園中止

NHK高校野球解説者・杉本真吾さん

 センバツに続き、夏の甲子園大会の中止が決定。お茶の間のテレビからも高校野球が消える一年になった。昨年まで、ひとりのファンとしていた浜木俊介記者は、NHKの解説者・杉本真吾さん(55)に電話でインタビュー。中止になって考えること、解説者としての喜び、記憶に残るゲームなど、幅広く聞いた。

 母校・米子東(鳥取)で監督経験のある杉本さんが最も心配しているのは、努力の結晶を披露する場を失ってしまった3年生のことだ。気持ちに区切りをつけるという意味でも、代替大会開催を切に願っている。

 全国の野球部員の99%以上が、甲子園の土を踏めないのが現実です(注1)。それでも選手たちがひたむきに練習に取り組むのは、自分の部活動を完結させたい、最後までやり遂げたいという強い気持ちを持っているからです。なので、そこを一番大切にしてあげたい。甲子園が無くなっても、独自の地方大会を行う意味はあります。

 3年の夏が終わると、大多数の部員が野球から離れます。何のために、ここまで続けてきたのか。集大成を最後の舞台で作り上げてほしい。試合に出られない者もいるでしょうが、そうであっても、大会がなければ自分の気持ちを完結させることは出来ないのです。

 選手は、試合に飢えています。仲間と一緒にプレー出来れば、それで満足なんだというけなげな思いをくみ取って、周りは一生懸命に考えてあげなければいけません。自分たちは、どのように取り扱われるのだろうか…。3年生は身近な大人を、そして社会を見ています。一方で3年生は、下級生に見られています。甲子園という目標を失っても、全力で野球に取り組む姿を示すことが出来れば、1、2年生にとって素晴らしい見本になるでしょう。

 杉本さんは99年からNHKで鳥取大会の解説を始め、02年のセンバツでゲスト解説として“甲子園デビュー”。06年夏からレギュラーになり、昨夏までに計196試合の解説を務めた。ソフトな語り口と、選手心理まで思いを巡らせるきめ細やかな分析に定評がある。

 努力を積み重ね、甲子園にやって来た選手たちです。まず、いいところを見つけてあげたいという気持ちが根本にあります。

 私が米子東の捕手として出場した夏の甲子園(83年)は、1回戦で敗れましたが(1―2学法石川=延長10回)、当時、NHKの解説者だった河合貞雄さん(西京商―慶大―住友金属)にリードを褒めていただいたことを覚えています。

 甲子園は野球を志した者にとって、人生最高の舞台です。放送を通じてかけられた言葉は、一生の宝になることを知りました。解説するようになり、かつての選手や保護者の方から「杉本さんは、こう言ってくれたんですよ」と声をかけていただくことがあります。私自身がそうですが、輝いていた頃を思い出すことは人生の励みになります。

 私は試合前の取材を大切にしています。高校野球の魅力は技術以外のところにあると考えているからです。チームとしての取り組み。選手がどのような努力をしてきたのか。学校の伝統や地域性といったバックボーンも重要です。これからも、選手の精神的な部分を感じ取りながら解説することを心がけたいと思っています。

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