「志村魂」酒控えず「舞台の上で死ねたら最高」 これほどつらい“想定外”はない…記者が悼む

舞台「志村魂」会見(前列左から)磯山さやか、志村けん、いしのようこ、みひろ(後列左から)寺門ジモン、肥後克広、上島竜兵、桑野信義(12年5月)

 15年前に初の座長公演「志村魂」への思いを聞くため初めてインタビューして以来、志村さんには、「バカ殿」や「だいじょうぶだぁ」のDVD化の際や本紙の競馬予想などで何度か取材させて頂いた。

 トーク番組が苦手と公言していたが、楽屋での志村さんも驚くほど物静かでシャイな人だった。たばこの煙をくゆらせ、時折照れ笑いを浮かべながら、とつとつと語るのがいつものスタイル。ところが、紙面を飾るための写真撮影が始まると、突然「志村けん」が登場する。シーンと静まりかえった部屋。カシャカシャとカメラのシャッター音だけが響く中、思い切りアゴを突き出して「アイーン」をする姿に、いつもすごみを感じた。

 「志村魂」は、関西の喜劇王・藤山寛美さんへのあこがれが結実したものだった。「泣き笑いの作品って最近なくなったじゃない? いつか泣かせる方をやってみたかったんだよね」。周囲からは「舞台はもうからないよ」と反対の声もあったそうだが、「そろそろ自分のやりたいことをさせてくれよ」と意志を貫いた。

 寛美さんも過度の飲酒によって肝硬変を患い、60歳で最期を遂げた。志村さんは「肝臓の数値が良くないから最近は焼酎なんだよね」と本気で体をケアする気があるのか、よく分からないことを言い、苦笑いもしたが、事務所の関係者が酒を控えるように言っても、どこ吹く風。近年タバコはやめていたが「舞台の上で死ねたら最高なんだから、うるさいよ」と言って飲み続けたという。

 聖火ランナーについても取材をお願いしていたが、東京五輪の延期と聖火リレーの中止が決まったその日(24日)に入院の知らせを受け、まさか5日後に急逝するとは。五輪ムードに沸く中、華々しく紙面を飾ってもらうつもりでいたが、ウイルスの恐ろしさを改めて思い知らされた。これほどつらい“想定外”はない。(高橋 誠司)

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