ボートレースの“甲子園”47都道府県代表が郷土の誇りかけ激突する大会が生まれた背景

全国でも屈指の広さの浜名湖ボートレース場。各都道府県代表の豪快なレースが見られそうだ

 第91回センバツ高校野球大会が23日、甲子園球場で開幕した。ボートレース界でも今年、甲子園と名のつくレースが誕生した。「全国ボートレース甲子園競走」(G2)が新設され、7月にボートレース浜名湖で第1回大会が開催される。出身都道府県ごとに1人ずつが出場する従来にはなかった大会が生まれた背景や、“甲子園”がボートレース界にもたらす影響を考えてみた。(正永 岳宏)

 6艇のボートが水上で激しいバトルを繰り広げるボートレースが熱い。公営競技では最も人気が上昇中で、15年に年間の総売り上げが1兆円を回復すると、18年は1兆3236億円を超えて、前年比は約10%もプラスだった。レース場の入場者数も増加の一途をたどっている。好調な波に乗って、新年度からの選手への賞金の増額が、先日発表されたばかりだ。昨年の賞金王は芸能人と同姓同名の峰竜太で、約2億292万円を稼いだ。

 そのボートレースで今年、2つのグレードレースが新設される。そのうちのひとつが「全国ボートレース甲子園競走」だ。甲子園といえば野球だが、90年代から「ダンス甲子園」など、甲子園と名のつく大会が増えてきており、甲子園は野球を知らない人たちにも知れ渡ってきた。ボート甲子園は約1600人の選手を出身地別に区分して、47都道府県の代表選手が一堂に会して戦う大会で、このようなレースは、これまでにはなかった。

 出場選手の発表は5月で、現時点では選手数が少ない県出身の選手ほど関心が高そうだ。宮城出身の萬正嗣(36)=群馬支部=は「面白い試みだと思います。多田には、永久に代表だな、と言いました。出られたら、一緒に頑張りたいですね」。多田有佑(36)=東京支部=は山形出身唯一のレーサーで、この制度だと出場は必至だ。「G2なので荷が重いです。B級の選手は何人出ることになるんですかね。なんとか格好はつけたいですが」と不安げでもあった。

 そもそも、各都道府県で選手数に大きな差がある。ボートレース場は全国18都府県に合計24場ある。所在地も偏っており、それを反映して、177人の福岡県を筆頭に選手数が100人を超えている府県がある一方で、10人に満たない道県が21あり、山形と鳥取は1人だけだ。昨夏の高校野球地方大会では、最少でも高知の28校だった。高校野球よりも大きな偏りがあり、各県から1人ずつというのは公平感は欠くが、思い切った施策だ。

 ボートレース業界では、14年から選手の出身地を表記するようになった。ファンから選手に、より親しんでもらおうという意図からだ。岩手出身の菊地孝平(40)=静岡支部=は、SG優勝5回で、優勝賞金1億円のグランプリで3年連続でファイナルに進出しているトップレーサーだ。岩手出身の選手は現役では2人しかおらず、また第1回大会が菊地のホームプールである静岡県のボートレース浜名湖で開催されるため、注目選手の一人だ。菊地は不来方(こずかた)高の野球部でも活躍し、後輩たちが17年のセンバツに21世紀枠で出場した。出身地の申告を求められた時「迷わず、岩手を選びました。生まれは北海道ですが、10歳の時から高校を卒業して本栖研修所(当時のボートレーサー養成所)に入るまで過ごしました。最も愛があるのが岩手です」とキッパリ言う。菊地のほかにも、青春を高校野球にささげた選手は少なくない。野球でもボートでも、郷土愛は甲子園の共通のテーマだ。

 ボートでは近年、新設レースが増えている。甲子園と同じG2のレディースオールスターは17年に始まった。女子選手のレベルアップに寄与している。「甲子園」も、層が薄い県の底上げを促す効果がありそうだ。将棋界では、女性の競技人口が増えたことで、実力の男女差が縮まってきた。選手数が少ない県でも、選手を目指す人が増えれば“格差”が縮まる。菊地も「志の高い人が出てきてくれるなら」と期待する。甲子園でも大活躍した大谷翔平(エンゼルス)や菊池雄星(マリナーズ)を輩出した岩手なら潜在力は高い。

 第1回は7月23日から開催される。夏の高校野球の代表が出そろう時期だ。レース名に「全国」の2文字があることも、甲子園のように親しまれる大会に育つことへの願いが込められている。また、地元出身の選手を応援するファンが増えることで、売り上げの増加も見込める。平成が終わり、ボートレースの新時代は甲子園から始まる。

 ◆出場選手決定方法 

 全ボートレーサー約1600人を出身都道府県ごとに分けて〈1〉B1以上〈2〉勝率5位以内、の条件を満たした選手の中から、日本モーターボート競走会が1人ずつを選ぶ。ボートのビッグレースは通常52人で行われるので、残り5人を施行者(今年はボートレース浜名湖)が選ぶ。一定の条件を満たした上で、選ばれる必要があり、選手にとって自力だけで出られる大会ではないので、夏と春の甲子園をミックスしたような選考方法だ。

 ◆勝率

 ボートレーサーの実力の指標の一つ。1着を10点、2着8点、3着6点、4着4点、5着2点、6着1点に換算して平均したもの。勝率とは呼ぶが、1着率ではない。また単位が%でもない。野球でいえば、投手の防御率のような数値。

 ◆級別

 将棋界が順位戦でA、B1、B2、C1、C2に分けられているように、ボートレーサーはA1、A2、B1、B2の4クラスに分けられる。それぞれの比率は2割、2割、5割、1割。半年ごとに変わり、18年11月~19年4月までの成績で19年7月~12月までの級別が決まる。

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