時代は守備シフトで攻める!MLBでは10年2463回から激増し18年3万4783回、1年で727安打が幻に

守備シフトが浸透すれば柳田も封じられる!?

 日米で野球が変わりつつある。MLBでは打者の打球方向の特性によって守備位置を大幅に変更する「シフト」がはやり、ファンの間でも定着しつつある。日本でもパ・リーグで昨年、主に二遊間が大幅に守備位置を変え、例えば一、二塁間に内野手が3人並ぶケースもあり、今季は日本ハムが積極的に敷くことを予告している。具体的な数字を出しながら、守備シフトを敷くことで実際、どのようなメリットがあるのかを分析する。

 米大リーグでの守備シフトは2010年前後にレイズがマドン監督(現カブス)の下、頻繁に行うようになり、近年は劇的に多くなった。毎年出版されているメジャーのデータブック「ビル・ジェームズハンドブック」によれば、10年は2463回だったのが、18年には3万4783回にもなった。

 一昨年、チーム初のワールドチャンピオンに輝いたアストロズも早くから導入した球団の一つ。A・J・ヒンチ監督は「この10年で革命的に変わったのは、シフト守備に対する認知度だろう。積極的な球団もあれば、そうでないところもある。程度の違いはあるものの、今は30球団が多かれ少なかれ、シフト守備を導入し、ゲームプランの一部になっている」と言う。

 「私が最初にシフト守備を導入した(Dバックス時代の)09年当時、シフト守備が逆効果となって、本来ならアウトにできた打球が安打になると、球場にはため息が充満したものだ」と振り返る。「でも、今は、シフト守備という概念が選手にもファンにも認知されている。シフト守備を好まない投手もいたが、そもそも投手は伝統的な守備隊形であれ、シフト守備であれ、打たれたら面白くないもの。今は情報を共有し、なぜ、こういう措置をとるのか、オープンに説明する土壌があり、コーチ、選手がそのプロセスを共有する認識が高くなっていると思う」と続けた。

 数値的に他球団より少ないカブスも、大胆なシフト守備を得意とする。ブライアン・バターフィールド内野守備コーチは「最初にシフト守備が導入された当時は、4時間も5時間もビデオを見る毎日だった。紙に打撃方向を書き込んでいくアナログなやり方」と回想し「ビデオ判定導入の影響もあり、球場のあらゆる場所にビデオカメラが設置されている今は、膨大に増えた情報量は全てコンピューター化されている」と情報処理に割く時間が大幅に減ったことを証言した。

 現在のヒッティングチャートは、一塁線から三塁線までの90度を4つの区域に分け、打球の飛ぶ方向によって地図のように示されている。単に方向だけでなく、正確な落下点、打球の上がる角度、打球のスピードもデータにある。例えば、赤色は強打、ブルーは柔らかな当たり、水色はそれよりさらに緩い当たりというように。一方で「情報量が多くなり過ぎた今は、取捨選択が非常に大事。瞬時に変化する試合の中で、1人につき15ページに及ぶヒッティングチャートを頭に入れて、守備シフトの指示を出すのは不可能だ。情報を分析し、必要なものを分類し、シンプル化して頭の中に入れることを心掛けている」と説明した。

 18年の数値では、メジャー全体で通常の守備位置なら安打だったのが凡打に変わった数を、逆にシフトの逆をついた安打数で引くと727安打が幻になった、という。シフト100回当たりで防いだ失点は1・7点との数字も出ている。両リーグでシフトが最も多いブルワーズ、レイズはともに昨年、勝ち越して成果を上げている。

 マンフレッド・コミッショナーが、極端なシフトに嫌悪感を抱いていると言われているが、今後も増えることはあっても減ることはないのではなかろうか。

 元号が変わる今年は、日本のプロ野球も「守備シフト元年」となるかもしれない。日本ハム・栗山監督が今オフ、「米国みたいにシフトを敷こうと思っている。野球はまた面白くなる」と大胆に予告した。

 日本でも昨年頃から、特にパ・リーグで二塁手や遊撃手が大幅に守備位置を変えるケースが見られた。だが、個人の判断に基づくものが大半。一、二塁間(三遊間)に内野手が3人並ぶような守備隊形は極めて珍しかった。

 その背景を、二塁手として09年まで6年連続でゴールデン・グラブ賞を獲得した中日・荒木2軍内野守備走塁コーチが推察する。「『ベースボール』と『野球』の違い。日本の野球は守備の空いているところに打つ技術が求められる。僕も打者としてはそれを狙っていましたから」。大別すると、大リーガーは自身のスタイルを貫き、日本の打者は自己を犠牲にできる―。

 栗山監督も「逆方向に打ちたくなる」と荒木コーチの見解と一致する。だが、その打者心理を踏まえた上で、シフトを敷くメリットを予測する。「その人らしさは消える。長い試合のスパンで考えたら、逆(方向)に打ってもらった方が良いケースもある」。自己犠牲が長所を奪い、さらには打撃に変調をきたすこともありえる、というのだ。

 大谷(エンゼルス)を「1番・投手」で起用するなど、セオリーにとらわれない知将は、MLBのデータを取り寄せ、シフト採用時と非採用時の打率が大きく変わる打者がいることまで調べ尽くしたという。「3打席目までシフトを敷いて、4打席目の打者が精神的にどう変わるか、みたいな分析が出ている」。守備位置の変更を利用すれば、打者に圧力がかけられると分析。状況に応じた「攻める守備」を構想する。栗山監督が先駆者となって、日本でもシフトが流行する可能性は十分にある。

 ◆ソフトバンク・柳田のアウトの打球方向? 日本ハム・栗山監督が、シフトが有効となりそうな具体例として挙げたのは、ソフトバンク・柳田だ。昨季のゴロアウトの内訳は、

 投ゴロ 10

 一ゴロ 32

 二ゴロ 65

 三ゴロ 7

 遊ゴロ 18

 引っ張った一ゴロと二ゴロが計97で全体(132)の73%を占める。

 逆に、外野飛球のアウトは、

 右飛 8

 中飛 21

 左飛 24

 引っ張った右飛の割合は全体(53)の15%しかない。低い打球は引っ張り、飛球は流し打ちという傾向がはっきりと出ている。

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